世界中で展開された「#MeToo」運動を契機に、セクハラはいますぐ解決すべき重大な問題だと認識され始めている。一方、その潮流に対するネガティブな反応もあるが、筆者は、セクハラのグレーゾーンが広いがゆえに、厳密な理解が進んでいないことがその要因であるという。本記事では、筆者が開発した独自のフレームワークを紹介し、あなたの会社でも起きているセクハラ問題への解決法を提示する。


 活動家のタラナ・バークが始めた「#MeToo」運動は、2017年10月、女優のアリッサ・ミラノが女性たちに「セクハラや性的虐待を経験したことがあれば、このツイートに『me too(私も)』とリプライして」と呼びかけてから勢いを増した。女性たちが呼びかけに応じて、さまざまなSNSでそれぞれの経験談を次々と語り始め、どれほど多くの女性が声を上げずにいたかが明らかになった。

 その後すぐ、「Time’s Up」運動が創設された。女性のために職場での公正、安全、公平を促進しようという運動で、目的の一環として掲げられているのが、権力体系を変えることだ。男性に有利であるがゆえに、女性への差別と敵意の温床となっているからだ。

 その盛り上がりの熱気は肌で感じられた。大きな文化的な変革が起こり、しかも、その動きは女性だけに留まらなかった。

 男性は自分たちの役割を見つめ直した。自分自身を省みて、女性に向けられたセクシャル・ミスコンダクト(性的不適切行為)を止めるために、その場にいた第三者として、自分は十分なことをしなかったのではないかと自問する者もいた。

 一方で、脅威を感じた男性も少なくなかった。著名な男性に対する非難が辞職や解雇につながるのを見て、同じことが自分たちにも起きるかもしれないと心配になったのだ。職場で「ペンス・ルール」(妻以外の女性とは食事や会合などで2人きりにならないようにするという、米副大統領の設けたルールにちなむ)を適用して、女性と1対1で会うのを拒むようになった男性もいる。

 さまざまな組織のリーダーたちと仕事をしてきた私の経験に照らせば、女性たちが上げている声へのネガティブな反応のほとんどは、何が厳密にセクハラに該当するかの理解が不足していることが原因である。

 ジェンダーに起因する侮辱について、軽度から重度までの形態を正確に分類しようとするとグレーゾーンが多く存在するため、当然ながら、セクハラ根絶の努力には混乱がつきまとう。また、疑問も山ほどある。男性が超えてはいけない一線はどこにあるか。男性も女性も、軽度に(あるいは重度に)侮辱的な発言や言動に、どのように対処していくべきか。どのような場合に、辞職や解雇が適切になるか。

 これらの疑問に応えて、私は「SSMW」(Spectrum of Sexual Misconduct at Work:職場におけるセクシャル・ミスコンダクトのスペクトラム)を開発した。その目的は、ジェンダーに起因する侮辱のタイプを定義し、タイプの違いを見極める助けになることだ。