街中を歩いていると、毎日のようにスマートフォンを操作しながら運転する自転車とすれ違う。しかし、これがいろいろな意味でいかに危険な行為かご存じだろうか。自転車の「スマホ運転」を巡っては8月、2件の死亡事故が大きなニュースになった。1件は元女子大生の有罪判決、もう1件は男子大学生の書類送検だ。いずれも人命を奪ったが故に重大な刑事事件に発展した案件で、2人の人生にも暗い影を落とす結果となった。なぜこれだけ問題になってもスマホ運転はなくならないのか。その危険性を検証してみる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

肩書は「前科1犯、無職、元女子学生」

軽い気持ちでつい…の「ながらスマホ」、自転車で死亡事故も起きています。写真はイメージです Photo:PIXTA

 元女子大生(20)の判決は8月27日、横浜地裁川崎支部で言い渡された。罪状は重過失致死罪、主文は禁固2年、執行猶予4年(求刑禁固2年)だった。

 判決によると、元女子大生は昨年12月7日午後3時15分ごろ、神奈川県川崎市麻生区の歩行者専用となっている商店街の市道で電動アシスト自転車を運転し、歩行者の女性(当時77)にぶつかって2日後に脳挫傷で死亡させた。

 元女子大生は事故前の少なくとも約30秒間、イヤホンで音楽を聴きながら、飲み物を持った右手でハンドルを握り、左手でスマホを操作しながら走行。スマホでメールのメッセージ送受信を終えた後、ズボンのポケットにしまう動作に気を取られ、事故を起こしたと認定された。

 裁判長は判決理由で「周囲の安全を全く顧みない自己本位な運転で、過失は重大」と厳しく断罪。弁護側は「悪質性の低い脇見運転」と主張したが、判決では「前方を注視しないばかりか、危険を察知してもブレーキを掛けられない状態だった。『脇見運転』と矮小化する主張は論外」と受け入れなかった。

 元女子大生に執行猶予が付いた理由は、家族が加入する損害保険で賠償が見込まれる点、公判で「同じ過ちはしません」と述べるなど謝罪し反省している点、そして大学を中退するなど既に社会的制裁を受けている点だ。