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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

プロ野球の「クライマックスシリーズ」はいらない

谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]
【第8回】 2008年10月20日
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 2008年のプロ野球ペナントレースは、セ・リーグ巨人、パ・リーグ西武が優勝して終わった。

 このようにいえば、「終わったのはレギュラーシーズンでクライマックスシリーズ(CS)が残っている」という反論が必ずあるだろう。

 しかし本来であれば、「レギュラーシーズン」と呼んでいるものが真のペナントレースであり、その優勝こそが最高の価値を持っている、と考えるべきである。CSの成績によって、その価値が変わることはあってはならない。それにもかかわらず、メディアは、CSの持つ問題を無視して、盛り上げることばかりを狙った報道を行なっている。

ペナントレースに影を落とした
オリンピック代表チーム

 CSについては後述するとして、まず、今年のペナントレースが正常ではないものになっていたかを検証する必要がある。

 それは8月に開催された北京オリンピックの日本代表チームのもたらした重大な影響である。それによってペナントレースの正常さが損なわれたといっても過言ではないだろう。

 「金しかいらない」という星野仙一監督のおごりと4位の成績とのギャップはあまりにも大き過ぎた。星野監督の金メダル至上主義にプレッシャーを感じて故障を押してまで出場したり、萎縮してしまった選手がいたのは間違いないだろう。そのうえ、「金」どころか「銅」メダルさえ獲得できなかったのだから、選手たちの受けた肉体的、精神的な衝撃はさぞかし大きかったのではないか、と推測された。

 オリンピック後、新井貴浩選手(阪神)のように故障の悪化でペナントレースに復帰できなかったり、精神的な後遺症を抱えながらプレーをした選手たちもいたはずだ。

 そんな中、首位阪神との13ゲーム差をひっくり返して優勝した巨人について、メディアは「ミラクル」という言葉を使った。しかし、主力打者の新井選手を欠いたことや他の選手のオリンピック後遺症による不調などによって、阪神のペースが狂わされたと言ったほうが正確ではないだろうか。ペナントレースレース前の予想では、チームの戦力から見て「巨人の独走」という見方が圧倒的に多かった。その意味では、巨人は苦戦の末ようやく優勝できた、ともいえる。

岡田監督辞任は
球界の大損失

 ペナントレースが終わったところで阪神の岡田彰布監督は辞任を表明した。首位を走り続けたもののゴール目前で巨人に逆転され、優勝を逃したことが辞任の理由だった。

 04年監督に就任してからの5年間で岡田氏は、80勝以上が3度、そのうち優勝が1度、2位2度という成績をあげた。ファーム監督時代から岡田氏は選手を育て上げる優れた能力を発揮し、1軍監督に就任してからも見事に選手の能力を引き出してきた。それとともに、揺るぎない現場での指揮ぶり、責任を一身に背負う姿勢などから岡田氏への選手の信頼は厚かった。

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谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。


だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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