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今夏にかけて世界経済の懸念材料の一つとなっていた、米国景気の鈍化傾向が明らかになってきた。米労働省が5月4日に発表した2012年4月の雇用統計において、非農業部門の雇用者数は前月比11.5万人増と、3ヵ月連続で増加幅が縮小した。
一方、失業率は8.1%と2ヵ月連続で低下したものの、その水準は依然として高い。しかも今回の低下は、失業者が減ったというより労働参加率の落ち込みによるところが大きく、「就業・求職意欲の減退が押し下げた可能性が高い」(小野亮・みずほ総合研究所シニアエコノミスト)。
そのため注目が高まっているのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加緩和策だ。バーナンキ議長は失業率が安定するための雇用の増加ペースを前月比15万~20万人増とみている。
現在実施しているオペレーション・ツイスト(短期債を売って長期債を買うことで長期金利を低下させる金融緩和政策)の期限が6月末に控えていることも鑑みれば、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和策を決定する可能性は高い。
とはいうものの、FRBのバランスシートを大きく拡大する量的緩和第3弾、いわゆるQE3ではなく、住宅ローンを担保に証券化したMBS(モーゲージ担保証券)の買い取りによって住宅ローン金利の低下を促し、同時に短期の保有資産を売却して総資産の拡大を避ける案が有力だ。
FRBが米国経済の最も弱い部分として見ているのが住宅市場で、「隠れ在庫も多く、構造的に供給過剰となっている」(木内登英・野村證券チーフエコノミスト)。米国ではリーマンショックから3年半がたった今も手続き上、まだ競売にかけられていない住宅が多く、それが住宅価格を押し下げている要因とみられる。
また米国の場合、住宅資産を担保にローンを借りて自動車などを買う個人が少なくない。住宅価格が下がると、そうしたローンを借りられず、個人消費も押し下げる要因となる。