ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
楠木建の週刊10倍ツイート

ハンズオフ
優れたリーダーは何を「していない」か

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第3回】 2012年6月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「オン」と「オフ」のトレードオフ

 経営者の仕事は担当者のそれとは異なる。担当者であれば、自分の仕事の領分が決められている。これに対して、自分の仕事はここからここまで、と区切れないのが経営者の仕事。必要とあらば、あらゆることに突っ込んでいかなければならない。当然の成り行きとして、忙しくなる。

 前回「ハンズオン」という話をした。ハンズオンで仕事をする。これが優れた経営者の要件であるとすれば、経営者はなおさら忙しい。

 ところが、優れた成果を出している経営者を眺めていると、忙しくてきりきり舞いしているような人はあまりいない。もちろん、実際は忙しいのだろう。しかし、相対していると、優れた経営者ほどむしろ時間的なゆとりを感じさせるものだ。

 前回も登場していただいた藤森義明さん(元GEの上席副社長、現在は住生活グループの経営をなさっている)。ずいぶん昔に彼から聞いたGE時代のエピソードがある。藤森さんのボスがジャック・ウェルチさんだったころのこと。ウェルチさんと直接会って話をする必要が生じる。すると、思いのほか簡単にアポイントメントが取れたという。巨大企業のCEOともなるとスケジュールがガチガチで、短い時間をとるのもはばかられるのが普通。ウェルチさんとのアポがすんなり取れることに、藤森さんははじめのうちは驚いたという。

 人間としてのキャパシティが大きい、器がデカいということもあるだろう。集中力が抜群で、一定の時間に普通の人よりも何倍も密度の濃い仕事ができるのかもしれない。しかし、優れた経営者といえども人の子である。スーパーマン、スーパーウーマンなわけではない。だとしたら、答えは一つしかない。「何をやらないか」がはっきりとしているということだ。つまり、「ハンズオフ」である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


楠木建の週刊10倍ツイート

人気経営学者・楠木建が、1週間で見たり聞いたりした出来事から、日々の雑感を1400字で綴る。
 

「楠木建の週刊10倍ツイート」

⇒バックナンバー一覧