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食の終焉
【最終回】 2012年5月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
神保哲生 [ジャーナリスト]

もはや破綻は不可避!?
今、われわれは何をすべきなのか。
『食の終焉』の著者ポール・ロバーツ氏に聞く、危機回避のシナリオ

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私たちは過去1世紀にわたって、食べ物の値段は下がり続け、量も増え、さらにより安全でより手に入りやすく、よりおいしくて進歩したものになると信じてきた。しかし、安価な石油の入手が難しくなり、灌漑用水が干上がり始め、土壌の生産能力は下がり続けている。これまで食を進歩させてきた要因の多くが、実は持続不可能なものであることが明らかになってきている。われわれ人類は迫りくる食の危機を乗り越えられるのか。それとも現在の食の危機は、これまで人類が経験した多くの危機とは違うものなのか。膨大な取材をもとに、現在の食システムが抱える構造的な問題を明らかにした『食の終焉』の著者、ポール・ロバーツ氏に今、われわれはどう行動すべきか、破綻回避のための方策を聞いた。

食べ物は生死に関わるシステムであり
食べ方を変えることは、生き方を変えることである

神保 まずは基本的なことからお尋ねします。そもそも食べ物に注目されたのはなぜでしょう。以前に石油に関する有名な本(『石油の終焉』光文社刊、原題:THE END OF OIL)をお書きになり、今度は食べ物です。そのきっかけは何だったのでしょうか。

ポール・ロバーツジャーナリスト。ビジネスおよび環境に関する問題を長年取材。経済、技術、環境の複雑な相互関係を追求している。著書に『食の終焉』(ダイヤモンド社)、『石油の終焉』(光文社)がある。現在は、デジタル経済と個人の結び付きを考察した本を執筆中。

ロバーツ 実は食べ物には何十年も前から興味がありました。石油の本を書いたのは、当時、それがメディアの注目を浴びていたからです。その頃は石油価格が高騰していましたから。でも食べ物にはずっと関心があったし、食のシステムと石油システムには共通点が多いのです。

 どちらもきわめて複雑かつ地球規模のシステムで、地球上のある地点で起きたことがその反対側に影響を及ぼすこともあります。石油ではそれが起きましたが、食べ物も同じです。石油は経済できわめて重要な役割を果たしますが、いうまでもなく食べ物はもっと重要です。石油の代わりは見つかりますが、食べ物は代えがききません。

 つまり食べ物は生死に関わるシステムなのです。経済的に重要なだけでなく、人々の精神にも深くかかわり、個人の生き方を左右します。誰かにあなたの食べ方を変えなさいといわれれば、腹が立つでしょう。なぜならば、それは自分の生き方を変えろと言われているのと同じことを意味するからです。

神保 この本を読んで、その調査と取材の量に圧倒されました。計画立案段階から調査や現地取材を入れると、この本を書き上げるためにどれくらいの月日がかかりましたか。

ロバーツ 3年ほどです。情報はその何年も前から収集してきましたから、それも合わせればとても長いですね。あちこち旅行もしました。中国、欧州各国、南米、もちろん米国各地へも行きました。食べ物が作られているところなら、どこでも関心がありました。それはとても長くて、面白い時間でした。

神保 取材ノートはどれくらいになりましたか。

ロバーツ 積み上げるとこれくらい(約1メートル)の高さにはなるでしょう。本にもたくさんの情報を詰め込みましたが、実際に集めた情報はもっとずっと多いからです。

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神保哲生 [ジャーナリスト]

1961年生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信などを経て1994年独立。以来、ビデオジャーナリストとして活躍。2000年1月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任、現在に至る。


食の終焉

肉、魚、野菜などの生鮮食品から、インスタントコーヒーやシリアルなどの加工食品まで、スーパーに行けば世界中の食品が1年中いつでも手頃な値段で手に入 る。しかし、われわれは、そのスーパーの棚の裏側で起きていることに対して、あまりに無知で無関心だ。グローバル化された食経済と、それを支える巨大なサ プライチェーンの裏側で今、何が起きているのか。世界の食システムが直面しようとしている危機の本質を読み解く。

「食の終焉」

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