食を進歩させてきた要因の多くは持続不可能、
人類は迫り来る食の危機を乗り越えられるのか

神保 本の中味についてうかがいます。この本を読んでもらうのが一番なのですが、まだ読んでいない人のために、あらためて本書の基本的メッセージは何か、お話しいただけますか。

ロバーツ これは基本的には”食の終焉”について述べた本です。それは単に食べ物がなくなるという意味ではありません。食に対する一つの考え方が終わりを告げようとしているということです。私たちは1世紀にわたって、食べ物の値段は下がり続け、量も増え、さらにより安全でより手に入りやすく、よりおいしくて進歩したものになると信じてきました。それは米国だけでなく欧州もそうだし、途上国でさえそう考えられてきました。

 今われわれはその考えを改めるよう迫られています。なぜならば、これまで食を進歩させてきた要因の多くが、実は持続不可能なものであることがわかってきたからです。安価な石油の入手が難しくなり、灌漑用水が干上がり始め、さらには飽食が肥満につながることもわかってくるにつれて、何もかもがよくなるはずだという食の古いモデルが、実は持続不可能な発想に依拠していたことを、われわれ人類はようやく理解するようになったのです。

 食の終焉というのは、食に対する一つの考え方が終わりを告げ、これに代わるより複雑な新しい概念が登場し始めることを意味します。

神保 食の終焉が近いとのお話しですが、この本で描かれている食の危機を人類は乗り越えられるとお考えでしょうか。それとも現在の食の危機は、これまで人類が経験した多くの危機とは違うのでしょうか。

ロバーツ 食の危機をそれだけで考えると、乗り越えることは可能だと思います。そのためには新しいテクノロジーの開発や、食料を生産し消費する新しい方法の発見などが必要かもしれませんが、そうした適応は可能だと思います。私たちはこれまでもそうしてきたし、これからもそれはできるでしょう。人類は創造力のある種ですからね。

 問題は、もはや食だけを取り出して考えることができない点にあります。食はあらゆることと結びついています。エネルギー、水、土、気候、地政学などと切り離すことはできません。そしてこれらすべての分野で同じような問題が起きています。十分な水を確保することが困難になっており、エネルギー価格も上昇しています。現在の食のシステムは安価な石油の上に設計されていることを忘れてはいけません。