受動喫煙Photo:PIXTA

 罰則付き受動喫煙対策を盛り込んだ「改正健康増進法」の全面施行まで1年半余り。

 受動喫煙については、発がんリスクの面が強調されてきたが、このところ、高血圧への影響が指摘されている。

 名古屋大学が中心の日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)のおよそ3万人の非喫煙者を対象とした解析では、「ほぼ毎日」たばこの煙に暴露されている人の高血圧(140/90mmHg以上)リスクは、「時々、またはほとんどなし」という人の1.11倍になった。

 暴露時間が1日1時間増加すると、高血圧リスクが1.03倍に上昇。女性より男性のリスクが上がりやすいことも判明している。

 このほか、25歳前後のたばこを吸わない若年成人を対象に、米国の4都市(バーミングハム、シカゴ、ミネアポリス、オークランド)で受動喫煙対策(バー、レストラン、職場での禁煙)を実施している地域と、非対策地域とで血圧への影響を調査した「CARDIA」研究(追跡期間1995~2011年)によると、対策地域の参加者は非対策地域の参加者と比較し、平均収縮期血圧(上の血圧)が1.14~1.52mmHg低いことが示された。

 転勤族の血圧を調べた結果、対策地域に住んでいた期間は、上の平均血圧が低いことも判明している。その一方、拡張期血圧(下の血圧)と有意に関連したのは、レストラン内での禁煙のみで、マイナス0.58mmHgの効果が認められた。

 研究者は「上の血圧が高い人は、高血圧の診断基準に達していなくても、心血管疾患の発症リスクが高まる」とし、受動喫煙対策が地域住民に利益をもたらすと指摘している。

 20年4月に施行される国の受動喫煙対策では、喫煙専用室での喫煙や「喫煙可」との表示がある小規模飲食店での喫煙が可能。基準の緩さに各方面から疑問の声があがり、東京都など一部の自治体では、国よりもさらに厳しい条件で受動喫煙対策を推し進めている。

 国、自治体の判断の結果がでるのは十数年後。心して見守りたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)