男性優位の社会であることに変わりはないものの、過去数十年の間で、女性は目覚ましい躍進を遂げてきた。とはいえ、それが一部の分野にとどまっていることも事実である。男性優位の環境下で、どうすれば女性の負担を軽減できるのか。筆者らが米国の陸軍士官学校を調査したところ、チーム内に同性の仲間が存在すること自体が、女性の活躍を促進する強力なツールになることが判明した。


 過去数十年間で、米国の女性は数多くの職業において目覚ましく躍進してきた。たとえば女性の内科医は、1960年代にはまれであったが、今日では約35%が女性である。そして、女性はいまや米医科大の新入生の半数以上を占めており、彼女らがキャリアのパイプラインを進んでいくにつれ、女性の割合は増える一方だろう。法律、獣医学、歯科などの職業でも、女性は同様の躍進を遂げている。

 だが、他の分野では進出が遅れている。コンピューター・サイエンスを修めた新卒業生のうち女性はたった18%で、米企業の経営トップでは女性はわずか11%である。

 何が女性の足かせとなっているのだろうか。男性が多数を占めるこうした分野に、より多くの女性が参入し同等となるようにするには、何ができるだろうか。

 このような男女格差には、数多くの理由が考えられる。

 性的偏見「ブロカルチャー」(男性間の絆を重視する、軽薄で男尊女卑的な文化)は、女性にとって居心地が悪い、男性優位の環境の醸成につながりうる。また、格差の原因を男女の比率そのものに帰すこともできる。つまり、女性が十分なサポートを得られないのは、周囲に他の女性がそれほどいないから、という理由だ。もしかしたら女性は、単に女性の同輩・同僚がもっと多くいることによって、メリットを得られるのかもしれない。

 このことを支持するエビデンスがいくつかある。複数の研究によれば、大学で工学の科目を受講している女子学部生のうち、周囲に女性の大学院生のメンター(助言者)が多くいる人ほど、工学をそのまま専攻にする可能性が高い。そして、成績のよい女性を友人に持つ女性ほど、STEM(科学・技術・工学・数学)系の上級科目を履修する可能性が高いという。

 とはいえ、これらの研究は限定的なものだ。もしかすると、女性は女性によるサポートからメリットを得ているわけではなく、その分野に熱心な女性が同様の女性に引き寄せられる傾向にあるのかもしれない。これは経済学者が「選択バイアス」の問題と呼ぶものであり、同輩集団が成功の要因かどうかは定かでない。

 別の問題として、女性の成功は、女性の同輩が多くいることでむしろ阻まれる、とする驚くべき研究結果も複数ある。これが起こりうるのは、たとえば定員数が決まっているなどの理由で、女性が互いに競い合わなければならない立場に置かれていて、女性が周囲に多くいるほど、むしろ成功が困難になるような場合だ。

 女性が実際に他の女性を助けるかどうか、どうしたらわかるだろうか。理想的には、医学実験で使われるような方法を実施すればよい。女性を処置群と対照群にランダムに割り付ける。処置群の女性には女性の同輩がいて、対照群の女性にはいない。処置群の女性が対照群の女性よりも成績がよかったら、そこには因果関係があると結論づける十分な根拠があることになる。

 このようなランダム割り付けの機会は滅多にないが、我々は1つ見つけた。経済学者デイビッド・ライルの研究からヒントを得たのだ。彼は、陸軍士官学校の生徒たちが、士官候補生中隊と呼ばれる同輩集団にランダムに割り付けられることを認識していた。これは、同輩による効果を選択バイアスの懸念なしに研究するための、自然な実験環境をつくり出してくれる。