「なぜ改札が必要なんですか?」

 私は、日本で政府や地方自治体の情報政策に関わる一方で、政治家や企業のトップを連れて韓国のIT事情を視察するツアーを主催してきました。このため、日韓の情報化を相対的に理解しており、そのことについて話をする機会も非常に多くあります。

 そうした経験を通じて、日ごろから「情報化の本質とは何か」について深く考えてきました。この連載を通じて私のそうした視点をみなさんと共有し、日本企業や政府・自治体が取り組む情報化、ITによる業務変革を、従来よりも効果的に進めていく参考にしてもらえたらうれしいです。連載第1回は、最近、私が情報化の本質について、非常に考えさせられたできごとについてご紹介しましょう。

改札を機械化する日本、改札をなくす韓国――情報化の本質とは何かソウル駅のKTX専用乗り場入り口。奥がホームとなる

 4月に韓国に行ったときのことです。ソウルから、日本で言う新幹線にあたるKTX(韓国高速鉄道)に乗ることになりました。チケットは事前にインターネットで予約して料金も支払済みです。ソウル駅に着いた私は、KTXの乗り場で改札を探して歩き回ったのですが見つかりませんでした。不安になりながら、「入り口」という表示に沿って進んだのですが、結局改札を通らないまま、列車に乗ることができてしまいました。

 予約してある自分の座席に座りましたが、不安でどうも落ち着かない。ちょうど車掌が通りがかったので呼び止めて、「チケットはこの通り持っているんだが、改札を通らないで乗ってしまった」と正直に話しました。すると、「改札はないんですよ」というではありませんか。驚いて「なぜ改札がないんですか?」と聞いたところ、「なぜ改札が必要だと思うんですか?」と、逆に車掌から聞き返されてしまいました。