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廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

今までの教育方法は、ホモ・モビリアンスになりつつある我々の子どもたちにふさわしいものか――佐賀県で進めている電子黒板導入で考えたこと

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第14回(最終回)】 2013年1月29日
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 本連載の第6回と第7回で学校教育におけるICTの正しいあり方についてお話ししました。今回は、私が佐賀県教育庁の情報企画監として実際に携わった、電子黒板導入に関するお話をします。

 佐賀県では2011年度から全県規模で「先進的ICT利活用教育推進事業」に取り組んでいます。その一環として、2013年からは、県立学校向けに、教師の様々な事務作業の削減と教育の情報化の推進を目的とした「教務支援機能や学習者管理機能及び教育用デジタルコンテンツ管理機能を備えた佐賀県独自の教育情報システム」の開発、教師へのICT利活用教育研修、そして個々の教室への電子黒板の設置といったプロジェクトを進めています。その結果、いよいよ2013年春から、全ての県立高校で電子黒板を利用した授業が始まります。

まずはRFI(情報提供依頼書)の発行から

 最近は日本でも採用されるようになってきましたが、海外では、地方自治体が学校や病院などの公共施設に設備や機器を新たに導入する際には、多くの場合、まず「RFI」を実施します。RFIとはrequest for informationの略で、「情報提供依頼」もしくは「情報要求をする行為」のことです。

 国民の税金を使う立場としては、特に、先端技術を搭載した製品の調達を検討するのは、非常に困難を伴う作業です。絶えずより高性能な新製品が次々と登場し、価格も大きく変動するなかで、よりよい調達条件や選定条件を取りまとめないといけないからです。

 それにはまず調達先の候補者に対して、調達条件や選定条件を取りまとめるのに不可欠な情報の提供を求める必要があります。そのための手続きがRFIです。要するにRFIとは「RFP(=request for proposal:提案要請書、入札依頼書)」を作成するための行為のことです。

 ところが、今も多くの地方自治体ではRFIを実施せず、直接RFPを発行しています。それは佐賀県庁も例外ではありませんでした。もちろんすべての調達においてRFIを実施する必要はありません。

 しかしながら、今回のように、これまで導入したことのない製品である電子黒板を学校に新たに導入する場合、RFIの実施は不可欠です。なぜなら、そもそも日本ではどのような電子黒板が販売されているのか、それらはどのような機能や特徴を持っているか、どのようなタイプが現場環境に合致するのかが分からなければ、適正価格も分かりませんし、妥当な予算を策定するのも困難だからです。事前情報なしにメーカーからの一方的な提案内容だけで良し悪しを判断することなど到底できません。

プロジェクタータイプの電子黒板
液晶モニタータイプの電子黒板

 そこで、佐賀県教育庁はRFIを実施することにしました。そのRFIに対して、今回10社を上回る数の会社が応募してくれました。そのうち7社が今まで一般的に使われてきたプロジェクタータイプ、残りの3社が液晶モニタータイプでした。

 電子黒板の特徴の一つに、映像教材などを簡単かつ有効的に扱えることがあります。日本の学校は韓国などに比べて教室の窓が大きく室内が明るい上、教室自体も広いという特徴を持っています。そこで、機種選定に参加した評価委員の方々は、このような環境下で使う電子黒板ということを前提に、検討を開始しました。

 まず、教育的な観点だけを考えれば、プロジェクタータイプよりも輝度が高く、教室の後方席の生徒でも鮮明に見える液晶モニタータイプの方が良いのではないかという意見が多く出されました。

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廉宗淳(ヨム・ジョンスン) [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。


廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

「廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか」

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