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自分で道具を買わずに“ものづくり”ができる!?
会員制工房「テックショップ」は
製造業再生のコンビニになるか?

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第198回】 2012年5月30日
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 アメリカの「ものづくり」熱は、ますます熱くなっている。ものづくりが好きな人々がシリコンバレーで集まって開くお祭り、メーカーフェアーは参加者や入場者数を増やす一方だし、一般人から募った資金を元にものを作って売るクラウドソーシングのサイト、キックスターターは次々と面白い製品や起業家を生み出している。手づくりの小物や服を作って売るサイト、エッツィーも相変わらず人気だ。

 ものづくり好きの人々のコミュニティーであるこれらサイトについては当コラムでも紹介したことがあるが、もうひとつ、ものづくりのエコシステムの中で忘れてはならないのが、「テックショップ」の存在だ。

 テックショップは、ものづくりのための大小の道具がそろった工房である。大きなもので言えば1000万円を超えるような工作機械もある。旋盤機械、3Dプリンター、プラスティック成型ができる機械なども揃っている。これらの機械にはコンピュータシステムが統合され、三次元ソフトウェアで設計したものを、実際の材料に落とし込んで部材として切り出すといったようなこともできる。小さなもので言えば、ミシンとかレーザーカッター、木工作業のための道具などなど。

 ともかく、テックショップは、何か作りたい人がやってくれば、ちゃんとそのための道具が待っているという場所だ。すぐさまものづくりに専念でき、せっかくのアイデアややる気を、道具を揃えたり探したりするエネルギーのために削がれなくていいのである。

 テックショップの工房は現在、全米5ヵ所にある。シリコンバレーに2ヵ所、サンフランシスコ市内に1ヵ所。アメリカのもうひとつのテクノロジー集積地と言われるノース・カロライナ州のラリー・ダーハムに1ヵ所、そしてデトロイトに1ヵ所だ。近いうちに、ワシントンDC付近にもオープンする予定という。

 テックショップ内では、さまざまなものづくりをする人々がいつも機械や作業台に向かっている。見知らぬ相手でも、メンバー同士はものづくり仲間としてすぐに懇意になる。互いに相談をしたり、できたものを見せ合ったりするのだ。ここで専門知識を持つメンバーに出会って、製品開発が大きく前進したという例には事欠かない。ものづくりのクラスもあって、機械の使い方や素材に関する知識などを学ぶことができる。テックショップからスタートして成功を収めた起業家のセミナーもある。要するにここは、ものづくりの現場であり、学校であり、コミュニティーでもあるのだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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