東京電力が家庭向け電気料金を10%値上げしようとしており、経産省に設置された有識者会議がその妥当性を審査しています。その様子は会議が開催される度に大きく報道されますが、それを見ていて違和感を抱かざるを得ません。経産省の目指す路線にメディアも乗ってしまっているのではないでしょうか。今回の値上げは絶対に認可すべきではありません。

なぜ人件費ばかり報道される?

 この有識者会議では値上げの妥当性について検討することになっていますが、委員会での議論とメディアの報道の双方で、どうも東電の人件費にばかり焦点が当たり過ぎているようにも感じます。

 今週開催された委員会を受けた報道でも、東電が冬のボーナスを含めていた、2014年度に500人規模の新規採用を考えていたなど、人件費に関する指摘ばかりが目立っていました。

 公的資金という輸血によって債務超過と法的整理を免れていることを考えると、社員にボーナスを払おうというのは論外です。また、JALは法的整理で社員の1/3を削減したことを考えると、実質的に債務超過の東電が、リストラについて国民が納得するレベルに達していない中で大量の新規採用を行うというのも論外です。

 こうした身勝手な人件費増を原価に入れて国民にツケ回しすることが許されないのは当然です。ただ、同時に、人件費ばかりに注目し過ぎてもいけないのではないでしょうか。これらの人件費を削っても大きな金額の節約とならない一方、もっと大きな無駄と不合理が原価に含まれているからです。

 その典型例は電源開発促進税(電促税)です。電源立地の促進に必要な政策のために電力会社が政府に納める税金であり、それが電力料金に転嫁されて国民負担となっているのですが、今回の値上げ申請では1000億円も原価に算入されています。

 この電促税の大半が、特別会計を通じて原発の立地促進のために使われてきました。しかし、そもそも政府の方針は“脱原発依存”のはずです。それならば政府は電促税を廃止すべきではないでしょうか。そうすれば東電の値上げの原価は1000億円下がります。

 こう言うと、電促税は法律に定められているから無理と思われる方も多いと思いますが、電促税を廃止する程度の法律改正は大変ではありません。その気になれば、条文の準備→法制局審査→閣議決定→国会審議というプロセスは1週間程度で終えられます。