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廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

必要なのは、「モノづくり」ではなく「ストーリーづくり」
――ソウル市の交通変革に真価を見せた情報化の威力

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第2回】 2012年6月12日
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バスは路線ごとに色分けされ、乗るべきバスがわかりやすくなった

 次に韓国スマートカードが行ったのは、バス路線の引き直しです。ソウル市役所を中心として、東京で言うところの山手線のような環状ルートを引いたほか、碁盤の目状に路線を引いて、よりわかりやすく、市内をまんべんなくバスが通るようにしました。

 さらにT-マネーという、日本のスイカのような交通料金の決済機能を持った、コンパクトなプリペイド式のスマートカードが導入され、乗客は、ソウル市内のバス・地下鉄・タクシーを1枚のカードで利用できるようになりました。

 すべてのバスにはGPS(全地球測位システム)を搭載、韓国スマートカードのコントロール・センターでは、ソウル市内の地図上に、どのバスがどこを走っているか、リアルタイムで管理できるようになりました。

 このため、コントロール・センターでは、バスの運行状況だけでなく、T-マネーの利用状況によって、それぞれのバスに何人の乗客が乗っているのかという情報までが地図上でひと目でわかるようになりました。バスの混み具合がすぐにわかるので、運用効率を大幅にアップすることができます。

バス内のT-マネーの読み取り機
T-マネーはカード型だけでなく、携帯アクセサリーになる形状のものも発売されている

 T-マネーによって、バス会社が違っていても運賃の管理が簡単にできるようになったため、バスを何度乗り換えても基本料金の支払いは1度だけ、あとは距離等に応じて加算するという、よりわかりやすくシンプルな料金体系への移行も行われ、乗客にとっての利便性も高まりました。前日の乗客の利用状況や運賃などの情報は、翌朝4時までに各バス会社に報告されるのでバス会社側も安心です。

 ソウル市にとっては、不透明な補助金支出が減り、市民は使いやすくて便利な公共交通機関を得ることができました。バスの利用者が増え、渋滞が緩和されただけでなく、同じ路線で複数のバスが競い合うようなことがなくなったため、バスの運転手にとっても安全な職場になり、給料も上がりました。

 韓国スマートカードは、システムの運用手数料や、スマートカードの販売や利用による収入が入ります。T-マネーで支払える場所はコンビニ、20の大学キャンパス、公衆電話、役所、自動販売機等に広がり、交通手段を利用する以外の、物品購入など一般利用による決済金額は、毎年2倍以上という大変な勢いで増えています。

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廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

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