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格差社会の中心で友愛を叫ぶ

「公設派遣村には行きたくない」!?
“もうひとつの派遣村”に留まった人々の複雑な事情

西川敦子 [フリーライター]
【第7回】 2010年1月8日
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 年末年始、テレビ画面には連日のように国立オリンピック青少年総合センターの映像が流れた。国と東京都が開設した宿泊施設「公設派遣村」だ。

 だが、施設で年を越した人々がいた一方、報道されないもうひとつの“派遣村”では、行政の支援に背を向けた人々がひっそりと正月を迎えていた。場所は、東京都豊島区にある東池袋中央公園。「特定非営利活動法 TENOHASHI(てのはし)」による越年越冬活動である。

 昨年の日比谷公園での「年越し派遣村」と同様、寒さに震えながら食事を手にしたホームレスたち。彼らはなぜ、池袋の路上から動こうとしなかったのか。

 現場に聞いてみた。

家族に居場所を
知られたくない父親たち

年末年始、東池袋中央公園でおこなわれた、てのはしの炊き出し。クリスマスにはショートケーキもふるまわれた。

 「そりゃ入れたら楽だろうけど、俺らはいいわ」

 炊き出しの列に並んだ男性たちは首を振った。

 「公設派遣村」の入所者は、個室に3食付き、ということもあってか最終的に833名に及んだ。

 だが、それでもなお池袋の路上には多くのホームレスたちが溢れていた。「てのはし」の炊き出しにも、昨年より減ってはいるとはいえ、1日あたりのべ300名近い人々が連日押し寄せた。彼らはなぜ渋谷に向かわなかったのだろう。

 60代の男性をつかまえて聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。

 「だって、施設が閉鎖されたら、暖かな部屋からまた寒空に投げ出されるわけだろ。よけいつらいよ」

 「でも、公設派遣村前では、弁護士による生活相談もやっているっていいますよ。雇用保険や生活保護申請の相談にも乗ってもらえるんじゃないですか」

 「生活保護を申請するには住所がないと駄目なんだよ。ホームレスを収容する自立支援センターなんかも、そりゃあるけどな。でも、入るわけにはいかないんだよ。家族に住所が知れちまうから」

 じつは生活保護を申請する際に、住所は不要だ。だが、自治体窓口では申請を阻む水際作戦として「住所がないと手続きが難しい」などと伝える担当者はいる。それを鵜呑みにしてしまう人も少なくない。

 それにしても“家族に住所を知られたくない”とはどういうことなのだろう。返す言葉に詰まっていると、長年、ホームレスの支援活動を続けているという女性がこう説明してくれた。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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