民主・自民・公明3党の実務者協議が、政府提出の「消費増税法案」と自民党の「社会保障制度改革基本法案」の修正で合意に達した。消費税率は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられることが決定した。

 この連載は、1年以上前から、最終的に消費増税が実現すると主張してきた。民主党政権の「国家戦略局構想」が頓挫し、「政治主導」は機能不全に陥った。参院選の敗北後は「ねじれ国会」に苦しんだ。野党は、倒閣を狙って与野党の話し合いを拒絶し、民主党のマニフェスト政策を「バラマキ4K」と呼んで完全撤回を要求し続けた。それでも、消費増税に関する与野党のコンセンサスは着実に形成されてきた。

「財務省のマインドコントロール」と言うのは簡単だ。だが、「陰謀論」とは一線を画したい。消費増税のコンセンサス形成は、80年代後半の「政治改革」以降の約20年間に渡る日本政治の潮流の中で位置づけて考えるべきだ(前連載第31回を参照のこと)。今回はまず、これまでのさまざまな論考を振り返りながら、なぜ消費増税のコンセンサスが与野党間で形成されたのかを論じたい。

約20年間に渡る
消費増税のコンセンサス形成の過程

 消費増税のコンセンサス形成の過程を検証するには、89年の竹下登内閣による消費税導入まで遡る必要がある。竹下首相は大蔵省主税局(当時)に、野党議員や労働組合に対する粘り強い説得を指示した。この経験から、主税局は与党だけではなく野党・反対勢力とも常にコミュニケーションを取っておくことの重要性を学んだ(第37回を参照のこと)。その結果、消費増税に対する理解者が、政界に増えていったのだ。

 また、「政治改革」による、94年の「小選挙区比例代表並立制導入」は重要である。当選者が各選挙区1人の小選挙区制下では、選挙で党の公認を得ることが決定的に重要となった。党執行部の「公認権」「人事権」が強化され、派閥の求心力は失われた。その結果「政策本位の政治」も実現し、当選するための地元への利益誘導はほとんど無意味となった(第30回を参照のこと)。