日本企業で働くビジネスパーソンを、新興国で社会課題の解決に取り組むNPO等に派遣し、本業で培ったスキルを活用して現地の発展に貢献してもらうと同時に、その過程で留職者自身のリーダーシップを高める「留職プログラム」。NPO法人クロスフィールズが今日まで8年にわたって展開している。その記録データの分析で明らかになった「新しいリーダーシップ開発論」についての全8回連載。その第3回をお送りする。


 私たち、クロスフィールズでは、個々の留職プログラムの実施前後において、現地での留職者のリーダーシップがどう変化したかを、7つのリーダーシップ項目で定量的に評価している。これを、本連載では「留職アセスメント」と呼ぶこととする。

留職アセスメントの具体的な項目

 これまでの留職アセスメント結果150件(人)のデータから、プログラム前後でのリーダーシップの伸び幅の上位者を抽出した。そしてそれらのケースで、彼らがどのような成長プロセスを辿ったのかを考察した。

 その結果、リーダーシップが大きく成長した参加者には共通して、マインドセットの大転換が起きていることが分かった。

 私たちは、このマインドセットの大転換を「自分事化」と名付けた。「自分事化」とは、「自分事」と「他人事」を隔てる境界が急速に拡大していく状態である。その結果として、当事者意識を持つ範囲が、一般に「他人事」である社会課題の領域にまで拡大していく。

 また、「自分事化」に至るまでには次の4つのステップを辿ることが分かった。

【注】
1)リーダーシップエレメント5項目(「ゴールを描く力」「対話する力」「巻き込む力」「挑戦する力」「やりきる力」)に、クロスフィールズの目指すビジョンの実現に必要となる2項目(「現地の社会課題を理解する力」「社会の未来と組織の未来を切り拓く力」)を加えたもの。リーダーシップエレメント5項目については、J. Kouzes & B. Posnerが掲げている "The Five Practices and Ten Commitments of Exemplary Leadership"等を参考にして設定している。クロスフィールズのビジョンは、「すべてのひとが「働くこと」を通じて、想い・情熱を実現することのできる世界」及び「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」の実現。
2)7つのリーダーシップ項目について、1-4まで、0.5ずつのスケールを取って具体的な行動基準を定めている。その基準に基づき、担当プロジェクトマネージャーが、留職者の現地での行動を、現地団体からのフィードバックも踏まえてスコアリングしている。スコアの最終化にあたっては、客観性を確保するために、クロスフィールズ内部で、他案件のスコアリングとの間でキャリブレーション(調整)をかけている。