原発の金融リスクがいかにして見逃されてきていたのかについて、前回に引き続き、ギョルギー・ダロス氏のインタビューなどから迫りたい。前回の記事で、東京電力の2002年の不祥事をはじめ、金融リスクを示す多くの警告を格付け機関が見逃していたとダロス氏は指摘した。まずこのあたりをもう少し掘り下げたい。本当に格付け機関は原発のリスクやその警告について知っていたのか。ダロス氏に改めて聞いた。(ジャーナリスト 井部正之)

ギョルギー・ダロス/グリーンピース・インターナショナル エネルギー投資シニアアドバイザー。エコノミストでコンピュータープログラマーでもある。ハンガリーのIBMやシティバンクで勤務後、コンサルティング会社「ボストン・コンサルティング・グループ」で国際エネルギー事業(電機、天然ガス、石油)の業務を担当。その後、国連食糧計画(WFP)のシニアエコノミストとして3年間勤務し、2011年より現職。ハンガリー出身。

格付け機関は
東電不祥事を知っていた

「もちろん私たちは彼らが何を知っていたかまではわかりませんが、少なくとも2002年の不祥事については知っていたはずです。またこういう格付け機関で働いているアナリストなどは、それぞれ担当している分野の専門家であるはずです。たとえば私はエンジニアではありませんが、コンサルタントとしてその業界に必要な基礎的な知識は持っていました。ですから彼らもある程度はわかっていたはずです」

 13日のセミナーでダロス氏が配布した資料には、2002年の東電不祥事が日本の英語媒体ばかりでなく、ロイター通信やニューヨーク・タイムス、ウォールストリート・ジャーナル、CNNでも大きく報じられていることが示されている。ダロス氏は続ける。