家電販売から事業をスタートさせ、ホームセンター、インポートブランドへと領域を広げながら東証スタンダード上場企業へと成長してきたセキド。家電市場の変化もあり事業の縮小が続いた時期には、次の柱となる事業の確立を迫られていた。そんな中、関戸正実社長は商品仕入れのために訪れていた韓国で、事業転換につながる大きなヒントをつかむ。
新たな柱となった
韓国コスメ事業
2015年7月、ソウルで中国人観光客が免税店で韓国製フェイスマスクを大量に購入していく光景を目にした。「これは日本でも確実に売れる」。関戸社長はそう直感した。
その年末、ほぼ飛び込みに近い形で韓国のメーカーを訪問し「日本総代理店として商品を扱わせてほしい」と直談判した。セキドの上場企業としての信頼性に加え、面談したメーカーの社長が「目がキラキラしていた。理屈抜きに、やる気を感じた」と語ったほどの関戸社長の熱意が、韓国コスメ日本総輸入代理店事業の大きな契機となった。
関戸社長は複数の大手流通企業との取引を広げ、セキドの総代理店事業はわずか4年で黒字化した。メーカーからの信頼も高まったが、BtoBの取引が広がるほど、関戸社長の中に別の問題意識が生まれていた。「最終的に商品を手に取るお客さまの顔が見えない」。そこで踏み出したのが、自社直営による韓国コスメ販売である。
単一ブランドだけでは集客力に限界があると判断し、21年11⽉に複数メーカーを扱う直営セレクトショップ「&choa!(アンド・チョア)」を立ち上げた。
韓国コスメの最新トレンドを体感できる直営店「&choa!」。今後は50店舗、100店舗を目指し、地方のショッピングングセンターを中心に出店していく
販売データを分析すると、「10代後半〜20代前半のコア層に加え、45〜55歳のコア層の母親世代という二つの重要顧客層が浮かび上がってきました」(関戸社長)。娘に連れられて来店した母親がエイジングケア商品のコスパの良さに気付くケースが多く、平均購入単価は大きく上昇していた。
同社の出店戦略も独特だ。「&choa!」は、現在18店舗を展開しているが、「今後は(競合の激しいエリアを避けて)地方のショッピングセンターを中心に展開します。ローカル市場に絞り込むだけでも100店舗を超えられる」と関戸社長はもくろむ。
そして、この直営店の成長を下支えしているのが、「&choa!」 誕生以前から進めてきたデジタル転換である。19年の消費増税をきっかけに、同社は最もコストのかかっていた紙チラシを全廃し、紙DMも停止。前年までに準備を進めていたスマホアプリ会員システムとAI(人工知能)運用に本格的に軸足を移した。
このデジタル基盤により、コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)は一気に進んだ。EC(電子商取引)ではAIが問い合わせ対応やデータ整理を担い、蓄積データが販売判断を後押しした。アプリ会員も1年で約3万人(現在16万人)に増え、MD(商品構成)精度の向上にも寄与。データ活用が進んだことで、総代理店と直営店の両輪はより強固になった。
PB開発と無人店舗構想が
示す次の一手
同社は次の成長を見据え、PB(プライベートブランド)開発にも本格的に取り組んでいる。「まず自分たちで試作品(ベータ版)を作り、売り場で検証しながら改良を重ねる」という現場起点の開発スタイルを取り入れた。
また、訪日外国人観光客から「日本製のコスメが欲しい」という声を聞き、日本のOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーと協業した自社ブランド開発にも着手。小ロット生産により商品設計の幅が広がり、提案力が大きく向上した。
自社開発の日本製PBコスメ「hada to kokoro」。優しい使用感と世界観の統一されたデザインで、国内外の顧客から支持を集める新ブランド。左はディスプレー、右は「オールインワンクリーム化粧水」
左から「香るジャム ボティスクラブ」、「SWEETS BODY CARE」
こうした取り組みが重なり、セキドは「総代理店×小売×PB×自社ブランド×AI」という、複合型の「SPA(製造小売業)モデル」を構築した。総代理店としての仕入れ力、直営店で磨いた売り場力、アプリとAIが生み出す顧客理解、OEMとのモノづくり。それぞれが単独で動くのではなく、相互に連動することで独自の価値を生み始めている。
さらに、同社が見据える次のステージが、AIを活用した無人店舗である。AIレジ、AIカメラ、セキュリティー会社のシステムを組み合わせ、来期中に1店舗の開設を計画。併せて、ミニスーパー内に小規模コスメコーナーを展開する構想もある。
関戸社長の意思決定は一貫して現場発であり、必要と判断したことにはすぐに動く。韓国でフェイスマスクの売れ行きを見た瞬間に総代理店獲得へ踏み出したときも、アプリ導入やAI活用を決めたときも、その根底には「まず試し、店頭で確認し、運用しながら最適解に近づける」というスタイルがある。
メーカーとの開発が停滞するなら自社で試作品を作り、売り場の反応を基に改良する。こうした実務に根差した判断は、PB開発や無人店舗構想にも共通している。総代理店、小売、PB、自社ブランド、AIと、個別に進めてきた取り組みが、一つの流れとして結び付きつつある。
関戸社長は、成長投資の面でも一貫して堅実だ。外部資金に頼り過ぎず、本業の収益を磨き、その利益を次の成長投資に回すという方針で事業を進めていくと話す。
市場の変化を見極め、現場で検証しながら最適化を進める。そのプロセスが、セキドの成長を支えている。
