いや驚きました。先週のわずか2日の間に、日本と欧州の両方でいい加減極まりない政策判断が連続して行われたのです。これは世界的な風潮なのでしょうか。今回のことから私たちは何を学ぶべきでしょうか。
ロジックなき原発再稼働
日本でのいい加減な政策判断とは、大飯原発の再稼働です。野田首相は6月8日の記者会見で、大飯原発を再稼働すべきとの判断を明確にしました。しかし、野田首相の発言を何度読み返しても、説得力ゼロ、支離滅裂、論理矛盾という印象しか残りません。
最大の問題は、原発の安全基準が暫定的であると認めているにも拘わらず、大飯原発の稼働を電力需給が逼迫する夏期に限定せず、一度再稼働させたら需給が逼迫しない秋以降もずっと運転させると断言していることです。
安全基準が暫定的である一方で、規制庁の設立を経て新たな安全基準が法定・実施されるまで最低でも1年は要することを考えると、論理的には新たな安全基準ができるまでの間は原発の再稼働も限定的であるべきなのに、“国民の生活を守る”というなんとも抽象的な理由のみで継続的に運転させようとしているのです。
個人的にこれほどいい加減な政策判断はないと思います。あれだけ悲惨な福島原発の事故が起きた以上、原発再稼働という政策判断をするにはしっかりとしたロジックが不可欠なのに、それが欠如しているからです。
原発をずっと稼働し続けたい本当の理由は、おそらく電力会社の経営と思われます。原発を再稼働できない場合、来年にもいくつかの電力会社が債務超過に陥る可能性があるので、何としてもそれを防ぎたいのでしょう。
この本音は、東京電力の延命と同様に明らかに経産省の官僚のロジックです。会見で原発の“再稼働”ではなく“再起動”という法律的に正確な表現を使っている辺りからも、会見の文章は官僚がすべて用意していることが伺えます。そうした点も踏まえると、このいい加減な政策判断は官僚のロジックに乗っかった確信犯的なものであると断言できます。
ついでに言えば、大飯原発再稼働を巡る福井県知事の言動も、官僚のロジックの延長です。私は個人的に、野田首相以上に福井県知事の方が確信犯的に偏った政策判断をしており問題が大きいと思っていますが、この点についてはいずれ稿を改めて説明したいと思います。