奈良公園でシカの怪死が続出
原因はプラごみの誤飲

シカは食欲旺盛でレジ袋も食べてしまうシカのプラごみ誤飲による死亡が相次ぐ奈良公園だが、奈良市も公園事務所も本腰を入れて対策しているとは言い難い。そもそも、日本のプラごみ対策自体が、国際的に見れば大きく遅れている Photo by Konatsu Himeda

 6月、民放のニュース番組で、白いレジ袋をモグモグと呑み込む奈良公園のシカが映し出された。奈良公園のシカは食欲旺盛で、数枚のシカせんべいをあっという間に平らげてしまう。「もっとちょうだい」と迫ってくるシカに、手持ちのレジ袋までも奪われそうになる――そんな経験を、筆者も含む多くのツーリストがしているだろう。

 2018年度における奈良公園のシカの生息頭数は1360頭(毎年7月時点調査)で、1年間の死亡数は347頭(奈良県奈良公園室)を数えたというが、誤飲と無関係ではない。テレビのニュースはそのシカの怪死について、「お腹から出てきたのは、レジ袋などの大量のプラスチックごみだった」と伝えた。

 シカの誤飲問題は以前から顕在化しており、奈良市はホームページに「レジ袋の削減に関する取り組みについて」というページを設け、2018年5月23日付で以下のように伝えている。

「国の天然記念物である奈良の鹿についても、散乱したレジ袋を誤飲し病死するという被害が見受けられます。レジ袋無料配布中止による消費量の減少を通して、レジ袋散乱の更なる減少、ひいては鹿の誤飲被害の減少に繋がると考えています」(下線は筆者)

 足元の奈良公園内に立地する小売店でのレジ袋無料配布の中止はどれだけ進んでいるのか、その取り組みの進捗を取材するため、同市の環境部環境政策課に電話をした。しかし、その回答は耳を疑うようなものだった。

「(奈良公園内の)商業施設でレジ袋を配布しているかどうかわかりません。市として実態調査を行っておりません。レジ袋の有料化は以前から取り組みはありましたが、奈良公園ではまだ手を付けていません」

 一方で、同課は怪死の原因となるレジ袋について「ツーリストによる持ち込み」と認識しており、「観光ガイド掲載やPRなど、広報活動に力を入れる」という。

 近年、奈良公園には日本人以上に外国人が多く訪れており、「外国人ツーリストが故意にレジ袋を食べさせているのではないか」という指摘すら上がっていた。しかし、「ポイ捨て対策」や「外国人客への呼びかけ」も大切だが、それだけでは十分ではないはずだ。

 なぜツーリストがレジ袋を公園に持ち込むのか。それは、奈良駅から春日大社、東大寺にアプローチする途中の商業施設や周辺の小売店で物を買ってしまうからだ。だとすると、せめてこうした小売店で「レジ袋ストップ」を徹底しない限り、この問題はなかなか解決しないだろう。シカを保護しようと思うのなら、本気になって原因を断ち切るしかない。