「オリンピックはインターネットで見たい」──2001年に刊行した『正確に間違う人、漠然と正しい人』(ダイヤモンド社)の中で、そう述べた(13「五輪、テレビ、そしてインターネット」)。

 これにはいくつかの理由がある。最大の理由は、私の見たい種目が、普通の人とかなりずれていることだ。私は陸上競技のトラック種目(だけ)を見たいのだが、これはテレビでは必ずしも十分には見られない(中距離や長距離は、必ずしも全部を放映してくれない)。また、放送していても、時間によって見られないことがある。今回の北京オリンピックは、競技場と日本の時差があまりないので助かるが、そうであっても、ちょうど放映時間に用事があって見られないことが多い。録画すればよいだろうと言われるかもしれないが、目的の競技の放映時間が正確にいつになるかを予測できない。それに、いちいち録画の設定をするのは面倒だ。このようなわがままな要求に応えてくれるのは、ウェブサイトで配信される動画のはずである。

 アテネオリンピックのときに比べても、動画のウェブ配信は格段と進歩した。北京オリンピックは、私の昔からの希望に応えてくれるのではないだろうか?

MSNBCのサイトは
きわめて充実している。だが……

 では、どのサイトで見ればよいだろう? 私が調べた限り、オリンピックに関するウェブサイトで群を抜いて充実しているのは、MSNBCオリンピック特集ページである。

 非常にうまく設計されているので、見たい競技をすぐに探し当てることができる。

 ビデオも、きわめて多数のものが提供されている。「Highlights」というセクションだけでも、8月20日の段階で949のビデオがある。「NBC Encore」というセクションには、155のビデオがある。これだけでもすでに1000を超えている。大会が終了すれば、この何倍かの数のビデオが蓄積されることになるだろう。しかも、競技種目ごとに、国名や選手名で検索できるようになっている。

 そこで、必要なソフトをダウンロードし、期待に胸を膨らませて開いてみた。ところが、何と「ビデオを見られるのはアメリカ合衆国内だけに限定されています」というアナウンスが流れて、ビデオそのものは見られないのだ!

 看板だけ眺めさせられて、「入場はお断り」と言われたようなもので、残念至極だ。オリンピックの放映権は国ごとに買っているためこのような結果になるらしいが、視聴者の側から見れば、奇妙な制約だ。

 そこで、やむをえず、静止画のセクションで我慢することにしよう。このサイトには、きわめて良質の写真が多数ある。男子100mだけに限っても、41枚もの写真があるのだ。だから、ビデオの代用にはならないにしても、かなり楽しめる。少なくとも、新聞で1枚の写真を見ているよりは、ずっとよい(写真の質も、新聞に比べれば、格段とよい)。

 なお、NBCには、NBC Nightly News with Brian Williamsというサイトがあり、ここにも「Beijing Olympics」というセクションがある。このサイトのビデオは、国境の制約なしに見ることができる。競技記録のビデオではないのだが、「中国体操女子チームは年齢を偽っているのではないか」などという議論がされていたりして、大変面白い。