東京・浅草ではNTT東日本の電話局のあるビル(右)にコンビニが入り、隣地にオフィスビル(左)ができた

「新たな収益源を獲得したい」

 NTT東日本の山村雅之新社長は就任早々の会見で、意外な事業にてこ入れすることを宣言した。

 その事業の現在の売上高は約100億円。これを5年後には最大300億円規模にしようというのである。てっきり通信関連事業かと思ったが、そうではない。なんと狙いは不動産だというのである。

 実は、NTT東の中にはまだまだカネを生む資産が眠っている。例えば、各地域の電話局周辺にある土地。電話局は老朽化すると建て替えが必要となる。ただ地下設備との接続を維持しなければならず、隣地に土地を確保して設備を置き換えている。

 とはいっても、20~30年は建て替えることなく土地は眠らせたまま。それを使わない手はないというわけだ。

 そこで2008年にオフィスビルなどを建設する子会社を設立。NTT東が土地を貸し、この子会社がビルなどの賃貸収入を得ているのだ。

 さらには、営業窓口であった施設も活用している。かつては料金徴収などの手続きの拠点であったものの、時代の流れとともに、この6月末をもって全廃された。

 残った施設は立地に恵まれた場所も多く、改装して居酒屋やレンタルビデオ店などに姿を変えている。既に約150カ所の施設を貸して収入を得ており、今後も約200カ所は活用できるとみている。

 5月下旬には各支店の総務部長ら約70人が集まって、「不動産利活用責任者連絡会」が開かれ、担当者から「まだまだ使える場所がある」との声がかけられたほどだ。

 もっとも、NTT東はこの10年間売り上げを年平均約700億円のペースで減らし続けており、減収分を補うには物足りない。

 そのため、社員の利用していたフロアを空けてまで賃貸収入を確保する構えで、「1円でも10円でも稼げるようにする」(山村社長)。NTT東の切実さが表れているともいえる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

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