あこがれの生活スタイルだったはずが

 「よかれと思ってやったことが、うまくいかない」

 そういうことが、何だか最近多いような気がします。

 自分のまわりを見ても、世界を見ても「昔よりよくなった」と自信を持っていえることが意外に少ない。むしろ世界規模で、さまざまな試みや新たな制度設計がことごとくうまくいっていない。そんな気がするのです。

 世界経済を揺るがしているヨーロッパ財政危機もその一つといえるでしょう。そもそもは「ヨーロッパは一つ」という理念のもと、EU(欧州連合)が発足。域内の障壁をなくして経済成長を促進するべく、通貨統合も実施されました。ところが、今の状況は、その目論見が逆に作用してしまったといってもいい。ヨーロッパのなかに救済する側と救済される側の経済的・感情的な亀裂を生んでしまった。まったく皮肉なことです。

 振り返ってみると、ヨーロッパ的なライフスタイルが長らく日本人のお手本とされていた感もありました。

 週の労働時間が40時間にも満たないのに何週間もバカンスを取って海辺で肌をこんがり焼いている姿や、夫婦ならんで公園でのんびり乳母車を押している姿を見ては、家族そろっての夕飯もままならない我が身を振り返り「いいなあ」とため息をついていた人もいたことでしょう。

 私生活を犠牲にして経済成長を求めるのではなく、プライベートな人生を充実させる。そういうスローライフこそが理想なんだ。ついこのあいだまで、ヨーロッパを礼賛する声がありました。

 ところが、ここにきて生活重視のスタイルが経済停滞の一因であることが明らかになってきた。結局、日本で理想とされてきたヨーロッパのスタイルにも限界があるということなのでしょう。