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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第36回】 2012年7月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

望んだはずのことなのに、
なぜ、「理想」はいつも破たんしてしまうのか

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あこがれの生活スタイルだったはずが

 「よかれと思ってやったことが、うまくいかない」

 そういうことが、何だか最近多いような気がします。

 自分のまわりを見ても、世界を見ても「昔よりよくなった」と自信を持っていえることが意外に少ない。むしろ世界規模で、さまざまな試みや新たな制度設計がことごとくうまくいっていない。そんな気がするのです。

 世界経済を揺るがしているヨーロッパ財政危機もその一つといえるでしょう。そもそもは「ヨーロッパは一つ」という理念のもと、EU(欧州連合)が発足。域内の障壁をなくして経済成長を促進するべく、通貨統合も実施されました。ところが、今の状況は、その目論見が逆に作用してしまったといってもいい。ヨーロッパのなかに救済する側と救済される側の経済的・感情的な亀裂を生んでしまった。まったく皮肉なことです。

 振り返ってみると、ヨーロッパ的なライフスタイルが長らく日本人のお手本とされていた感もありました。

 週の労働時間が40時間にも満たないのに何週間もバカンスを取って海辺で肌をこんがり焼いている姿や、夫婦ならんで公園でのんびり乳母車を押している姿を見ては、家族そろっての夕飯もままならない我が身を振り返り「いいなあ」とため息をついていた人もいたことでしょう。

 私生活を犠牲にして経済成長を求めるのではなく、プライベートな人生を充実させる。そういうスローライフこそが理想なんだ。ついこのあいだまで、ヨーロッパを礼賛する声がありました。

 ところが、ここにきて生活重視のスタイルが経済停滞の一因であることが明らかになってきた。結局、日本で理想とされてきたヨーロッパのスタイルにも限界があるということなのでしょう。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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