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老朽化した「通信の秘密」は聖域なき再考が必要か

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【号外】 2012年7月13日
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「通信の秘密」を
絶対視しない議論が必要だ

 その一方で、今回改めて注目された「通信の秘密」について、そもそも考え直すべき時が来ているのかもしれない。

 通信業界ではとかく金科玉条の如く扱われている「通信の秘密」だが、そもそもの経緯を紐解けば、日本国憲法第21条2項後段で示される「通信の秘密は、これを侵してはならない。」という文言を根拠としている。

 しかしこの21条は、そもそもGHQ草案(Article XX)に含まれていたものである。そしてそもそも市民社会の成熟した近代国家における憲法の意義とは、市民が政府と対峙する権利を確保し、一定程度の「武器」を渡すことにあり、GHQもそうした意識が高かったことはよく知られている。

 そしてその当時の通信の担い手といえば、電電公社と郵便局であり、つまり政府機関である。すなわち通信と政府の距離は非常に近く、それゆえに政府が勝手に市民の通信に介入することを厳しく制限したのが、そもそもの発端となっている。

 ところが、電電公社と郵便局は、いずれもすでに民営化された。NTT法等の形で政府の監督権限が明示されていることによる「監督責任」はあるかもしれないが、それとて他の民間事業者に対する規制当局という一面と同様でもある。すなわち、現在の日本政府は通信の直接的な担い手ではない。従ってラディカルに考えれば、日本国憲法は、そもそも法律の前提が崩れている、と考えることもできる。

 電気通信事業者に「通信の秘密」を守ることを具体的に課している法律は、電気通信事業法である。通信の自由化に伴って制定されたもので、前身は電電公社と旧KDDを規制するための「公衆電気通信法」となる。この第101条~第103条に、通信の秘密に関する罰則付きの規定があり、電気通信事業法もこれをそのまま引き継いでいる。公衆電気通信法の制定が昭和28年。つまりこの法律も、もはや還暦間近である。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


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2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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