磯崎功典・キリンHD社長は、いよいよ“本丸”である持株会社とキリンビールの合理化に着手したとも言える。

 キリングループで飲料事業を手掛けるキリンビバレッジでも、「今後、うちでも早期退職の動きがあるようだ」(キリンビバレッジ関係者)との証言もあり、キリングループに激震が走っている。

ライバル社員も寝耳に水の人員整理策

 「正直に言えば、キリンは業績が好調だったから寝耳に水だった」(アサヒビール社員)。

 ライバルメーカーも、今回の合理化策に驚きを隠さない。

 それも無理からぬ話だ。キリンHDは、第3のビール「本麒麟」の大ヒットなどが貢献し、2018年12月期決算で過去最高益を達成したばかりだったからだ。

 これまで日本企業が実施する早期退職では、業績不振で追い詰められた企業が半ば強制的に人件費をカットする「リストラ」型が主流だった。

 だが近年は、手元にキャッシュがあるうちに余剰人員を削減する「先行実施」型の早期退職が増加している。業績好調な企業が、成長分野への事業展開を図るために、財務的な余裕のあるうちに人員の適正化を進めるケースが増えているのだ。今回のキリンのパターンもこの典型例である。

 今年発表した中期経営計画では、キリンビールを中心とした「食領域」と、協和キリンが手掛ける「医領域」の中間に位置する「医と食をつなぐ事業」を立ち上げ、3年間で3000億円の投資を掲げている。早速8月に、1300億円の巨費をつぎ込み、化粧品大手ファンケルへの資本参加を決めるなど、次世代の種まきへの投資を加速させている。