「限界利益の嘘」と
「変動損益計算書の偽善」を暴く

 CVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)は、現在の管理会計や経営分析の世界において、絶対的通説の地位にある。「定量分析」というシャレた名称を用いようとも、そこで語られているのは、CVP分析だ。

 巨大なシステム開発会社が、ビッグデータに対する分析機能をどれほど喧伝しようとも、所詮は〔図表 2〕(1)のCVP分析(1次関数=単利計算構造)の域を出ていないことに注意して欲しい。また、国際会計基準IFRSが世界を席巻しようとも、これまた1次関数に基づいている。「IFRS対応」などというと最先端のような気がしてしまうが、その根底にあるのは〔図表 2〕(1)の単利計算構造にすぎない。

 読者が利用している情報システムを参照して欲しい。そこには必ず、CVP分析の機能が搭載されている。1次関数を用いることから、これを「線型原価計算・線型管理会計」と呼ぶ。

 こうした「線型理論」に基づくものとして、限界利益とそれを用いた変動損益計算書がある。次の〔図表 4〕は、ニッサンの直近2期間について作成したものだ。通説の例に倣い、「CVP年間固定費」とせず、単に「固定費」と表示している。

 〔図表 4〕に示された「異常値ぶり」を、おわかりいただけるだろうか。両期の固定費はマイナスになっている。〔図表 3〕の右下で表示しているCVP年間固定費の金額を移記したものだ。

 売上原価から法人税等に至るまでのコストは、固定費と変動費に分解される。故に、これを固変(こへん)分解と呼ぶ。

 例えばコストの合計額が10である場合で、固定費が▲2であれば、変動費は12という異常値を示す。〔図表 4〕では、固定費がマイナスになっているのであるから、変動費は売上高を上回るほどの金額となり、その結果、限界利益(貢献利益・変動利益)は両期ともマイナスになる、という異常値を示すのだ。