5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#7Photo:picture alliance, Mario Tama/gettyimages

トランプ関税に加え、電動化・ソフトウエアなどの先行投資が重荷となっている自動車業界。ホンダと日産自動車の提携など、再編を巡る動きも依然くすぶる。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#7では、自動車業界における“有望企業”とそうでない企業の展望を解説する。日産は大幅なリストラ案を掲げたものの、依然不十分な面が目立つほか、ホンダも単独での生き残りは難しく、踏み込んだ改革が求められる。これらの企業に必要な“処方箋”とは。さらには、トランプ関税への対応とこの窮地を切り抜けられる企業の“条件”などを明かしていこう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

不透明感の強い自動車業界
日産は巨額赤字に転落

 日産自動車の苦境が続いている。2025年3月期は過去3番目に大きい額となる、6700億円もの巨額赤字を計上した。カルロス・ゴーン元会長時代から続いてきた拡大路線の“ツケ”や商品力の欠如など、構造的な問題点がここにきて一気に噴出し、経営危機の真っただ中にある。

 内田誠前社長に代わって登板したイヴァン・エスピノーサ社長は、5月に大幅なリストラ策を含む再建計画を発表。提携戦略の強化のほか、17の工場を10に集約し、2万人の人員を削減するなどして合計5000億円の変動費と固定費の削減を掲げるなど、踏み込んだ計画を発表した。

 だが、「これまでの合理化策よりは評価できるものの、工場削減や人員削減など依然不十分な面があるほか、実際に計画が完遂できるのか、経営陣の実行力も注視する必要がある」と、SBI証券の遠藤功治チーフエグゼクティブアナリストは指摘する。これだけのリストラ策を掲げても不透明感は拭い切れず、着実な復活が果たせるのか、目下自動車業界の大きな関心事となっている。

 一方、独り負けを喫する日産に対して、他社が安泰かといえばそんなことは決してない。

 そもそも、足元ではトランプ関税の逆風が強まっており各社が大きくダメージを受けているほか、長期的に見ても、「100年に1度の大変革」といわれるように、電動化やSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)での競争力強化、それらを実現するための提携戦略など、さまざまな難題が押し寄せている。

 そこで、次ページでは、今後の各社の課題を洗い出すとともに、今後の勢力図の中心となるような有望企業はどこなのかを明かしていこう。日産はこのリストラ策で本当に浮上できるのか、不足している点とは何か。また、単独での生き残りが難しいホンダは日産との統合の再検討が重要な鍵となるが、それ以外に踏み込むべき大胆な“処方箋”についてもひもといていく。また、トヨタ自動車、スズキに死角はないのか。5年後の業績予想とともに、その全体像を解説しよう。

 さらに、各社の競争力にも直結するトランプ関税に、各社はどのように対応していくのか。米国への生産移転はあり得るのか。関税問題を切り抜けられる企業の“条件”を明かしていく。

図表:5年後の自動車(サンプル)