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“ニッポンの地方”再生物語

【長崎県端島ルポ】
郷愁漂う廃墟に心惹かれたツアー客が殺到
「軍艦島」を眠りから呼び覚ました元住民の魂

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第3回】 2012年7月27日
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ここは長崎県端島。上陸ツアー船のブラックダイヤモンド号は、長崎港を出港、高島を経由して、ついに「軍艦島」に到着した。貯炭場、竪坑桟橋跡、高層アパートなど、目の前に迫り来る廃墟に息を飲む。長崎県が上陸を解禁してからの3年間で、上陸者は22万人を超え、地元に約65億円もの経済波及効果をもたらしたという。今回の旅で、「軍艦島」を眠りから呼び覚ました元住民に話を聞くことができた。その胸に去来するものとは何か。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 相川俊英)

(上)軍艦「土佐」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれる端島。遠くから見ると、まさに「軍艦」そのもの。(中)上陸ツアー船のブラックダイヤモンド号。(下)上陸を目前にして、島の威容に見入るツアー客たち。

波が激しく前日には着岸を断念
ようやく上陸を果たした「軍艦島」

 桟橋に飛び移ったクルーが必死の形相でロープをキャッチし、留め金に結びつけた。そのロープを船内のクルーが引っ張り、船を桟橋に横付けする。何本ものロープが桟橋と船の間を行き交った。

 「ギ―ギーギーギー!」

 船が上下に激しく揺れる度に、不気味な音が鳴り響いた。船の横っ腹に設置されたオレンジ色の発泡スチロールが、桟橋と擦れ合う音だ。

 波しぶきが容赦なく、船内に飛び散る。外洋とあって波が荒い。島の周囲は灰色の岸壁で覆われ、その先に廃墟の建物群が屹立する。

 ここは軍艦島(長崎県端島)である。上陸ツアー船のブラックダイヤモンド号は午前9時に長崎港を出港、高島を経由して軍艦島に到着した。

 50人ほどのツアー客は、固唾を飲んでクルーの奮闘ぶりを見守った。着岸できず、上陸を断念するケースも少なくない。実際、前日がそうだった。ロープを渡したもののうねりが激しく、船の安定が保てない。立木義和船長は、「危険だ」と判断して周遊ツアーに切り替えた。無念の思いが船室内に充満した。

 上陸ツアーの料金は、300円の見学施設利用券を含めて4300円。上陸できなかった場合、300円は返金される。ツアー時間は約3時間に及ぶ。ちなみに、昨年度の上陸成功率は81.7%。月別で見ると、4月が最低で69.5%である。

 再チャレンジとなったこの日も、好条件とは言えなかった。風が強く、着岸できる可能性は五分五分と見られていた。ハラハラドキドキしながら、接岸作業を見守るしかなかった。

 それでも、何本ものロープが船と桟橋の間を行き交ううちに、ギーギーという擦れ合う音が次第に小さくなっていった。船の揺れも落ち着いてきた。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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シャッター商店街、過疎に高齢化……地方の衰退が言われて久しい。が、地方でも自らの特徴を見つめ、知恵を出し、自らの力で、再生しようという動きが、あちこちで起こっている。地方の自立向けた果敢な取り組み、ユニークな取り組みを紹介する。

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