「最高の公共事業じゃないのか。1兆円規模の都市造りだ。ゼネコン、ICT企業、輸送業、その他製造業やサービス業も、日本のすべての企業に参入する資格がある。大量の建設と雇用が生まれる。国民の意識も変わるし、新首都の周辺地域には新しい産業も生まれ発展する。最近にないグッドニュースだ」

「あんなシンプルで平凡な都市が、日本の未来を明るくしてくれるなんてね。なんだか不思議な気分だ」

「早く国民にも発表すべきだ。ここのところ暗いニュースばかりだから、少しはホッとするんじゃないか」

「目玉は情報インフラシステムだろうな。あの建築家はさらりと言ったが、実現出来ればかなり高度なものだ。世界のどの都市もまだ使ってないぜ。まだ実用化されてないんじゃないか」

「だから目玉なんだよ。日本ばかりじゃなく、世界がもっと近く、親密になれるシステムだ」

 様々な声が飛びかっている。

 「ねえ、あなたあの新首都模型、知ってたんでしょ。それにもしかして、インターナショナル・リンクのCEOビクター・ダラスも新首都模型を見たんじゃないの。だから、会見を延期した。だって、この異常時にあなたも村津さんも変に落ち着いているもの」

「落ち着いてるとは、心外だな。これでもかなり慌ててるつもりだ」

「とにかく、インターナショナル・リンクが発表を控えるなんて余程のことなのよ。財務省の全員が驚いてた」

 森嶋は答えなかった。何か言えば、ますます優美子の想像力を膨らませるだけだ。