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岸博幸のクリエイティブ国富論

有料電子版という日経新聞の「試行錯誤」は間違っていない!

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第78回】 2010年2月26日
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 2009年の広告費総額が発表されましたが、日本でもついにインターネット広告の市場規模(前年比1.2%増、7069億円)が新聞広告(前年比18.6%減、6739億円)を追い抜いたという報道がありました。これでネット関係者は一層勢いづき、「新聞は衰退産業」、「新聞は崩壊してネットが栄える」という論調が強くなると思います。しかし、そうしたステレオタイプな議論に騙されてはいけません。今回は、こうした分野に詳しくない方を対象に新聞の将来について簡単に説明したいと思います。

ネット広告vs新聞広告という論点は時代遅れ

 まず理解していただきたいのは、ネット広告が新聞広告を追い抜いたこと自体に大した意味はないということです。

 既に英国では、2009年前半にネット広告が新聞どころかテレビも追い抜き、媒体別の広告シェアでは最大となっています。米国ではまだネット広告が新聞広告を追い抜くには時間がかかると思われますが、世界の趨勢としてはテレビや新聞などの広告費が急減する一方でネット広告は急増しており、広告費の順位の逆転は必然なのです。

 ちなみに、日本の新聞社の収益構造は、例えば米国とは大きく異なります。新聞社の収益源は定期購読料と広告料ですが、米国では前者と後者の比率が1:3であるのに対して、日本では2:1となっています。日本の新聞社は広告よりも定期購読に依存する割合が大きいのです。それでも、2000年以降の広告料収入の減少のペースは米国よりも日本の方が大きいので、日本の新聞社がかなり厳しい状況に置かれていることは間違いありません。

 いずれにしても、現在進行している広告費のシフトはネットの出現・普及という環境変化に伴う必然の事態です。ネット広告が新聞広告を上回ったというのは、新聞社は紙中心の旧態依然としたビジネスモデルにしがみついていては生き残れなくなるという警告のようなものなのかもしれません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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