「うざい」「微妙」という受け答えでは
論理力は磨かれない

 私たちが説得力のある発言をしたり、文章を書いたりする際にも、先ほどの証明問題の解答と同じように論理的である必要があります。

 説明に無駄な部分があったり、足りない部分や飛躍する部分があったりすると説得力が弱くなってしまうのです。

 最近の若者は論理力が乏しい傾向にあると言われます。
AだからB、BだからCと順を追って自分の気持ちなどを説明することを面倒がり、なんでも「うざい」「微妙」などの一言で片付けてしまう若者が増えているようです。

 自分の気持ちや言いたいことをある程度、論理的に伝えてこそ相手に自分の言いたいことが伝わり、本当の意味でのコミュニケーションができるのですが、論理力を軽視する風潮があるのかもしれません。

 たとえば、「最近、元気?」と聞かれたときに「最近はね、仕事が忙しくて、先週今週と休みなく仕事してて、疲れ気味だから体調が微妙に良くないんだよね」と言えば、相手に自分の状況をある程度伝えることができます。

 しかし、「最近、元気?」と聞かれて「微妙」とだけ答えるのでは、相手に自分の状況が伝わらないですし、そこで会話が終わってしまいます。

 なぜ、最近の若者が論理的に話すことを面倒がる傾向にあるかというと、彼らは論理的に話したり書いたりすることのメリットを十分に認識していないからということが考えられます。

 友人と論理的に話さず、一言でその場その場をやり過ごすコミュニケーションに終始していても、表面的な付き合いは継続できます。
しかし、それでは深い人間関係を築くことはできません。

 最近の若者に、論理的に話したり書いたりすることのメリットを十分に認識してもらうために、学校教育においてもっと論理力の大切さを教えるべきでしょう。

 数学の証明問題は、論理的なトレーニングそのものであるのですが、中学2年生の数学の教科書に「論理」という言葉はほとんど出てきません。教科書の巻末の索引をみてもやはり「論理」という言葉は載っていません。

 もちろん「論理」という言葉が大事なのではなく、論理の内容そのものが大事なのですが、数学の証明問題は論理のトレーニングとイコールであり、論理のトレーニングを積むことでどのようなメリットがあるのかを、学校教育において生徒にわかるように教えてほしいものです。