「経産省は電事連の
解体を狙っているだろう」

 かつて電力会社は、必要なコストを上乗せして一定の利益が得られる「総括原価方式」を武器に、強固な財務基盤を持ってきた。電事連は電力各社の豊富な人員と資金力をバックに、特に東電を中心とした事務局メンバーが永田町や霞が関に食い込んだ。

 政治献金はもちろん、国政選挙での支援や政治家の親族の就職を斡旋するなど、永田町とずぶずぶの関係を築いた。理論武装に長ける霞が関の官僚を“指南”することもしばしばで、時には首相をも動かす超強力なロビー活動を展開していた。

 ある政府関係者は「わわわれが知らない超一級の情報を電事連、特に東電の人から教えてもらうこともあった。永田町の重鎮を動かすほどの力があって、不気味だった」と振り返る。

 しかし、福島第一原発事故をきっかけに東電が事実上の国有会社になってから、電事連はパワーを失ってきている。

 16年に始まった電力小売り全面自由化によって地域独占が崩れた。国策民営方式である原子力についても、政府はそのあり方について大方針を示さず、司法によって原発の運転が止められても“塩対応”のまま。

 電力業界の“優遇策”が次々となくなっていくのは、電事連の影響力が低下したことの表れだろう。自民党関係者は「かつてほど議員会館で電事連や東電の姿を見ることはない。どちらかといえば、労組の方かな」と、電事連の存在感の低下を指摘する。

 20年は電力業界にとって、今後のエネルギー政策の行く末を決める重要な年である。政府の第5次エネルギー基本計画の見直し議論が始まるからだ。原子力政策をはじめ、世界的に逆風となっている石炭火力発電所、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの位置づけなど、重要な課題が山積している。

 これらの重要課題に対して、どこまで電力業界の意向を反映させられるか。特に原発の新増設、建て替え(リプレース)の方針を計画にしっかりと明記させるのが、電事連の最大のミッションである。

「中3社に比べれば、圧倒的に政府や永田町へのパイプが細い。そもそも地方電力は、中央のことは中3社のおんぶに抱っこ状態だった。九電が電事連会長を務めるなんて、荷が重すぎる」と電力業界関係者はやゆする。

「東電が元気なときは電事連の事務局をしっかり支えて、会長はその神輿に乗っているだけでよかった。東電が弱った今、電事連はそもそも機能していない。経産省は電事連の解体を狙っているだろう」と電事連関係者は憂う。

 これまで経産省は、特に“改革派”官僚が電力業界にメスを入れようとしても、幾度となく与野党の政治家、大物官僚OBらと強力なネットワークを持つ電事連に阻まれ、煮え湯を飲まされてきたからだ。

 福島第一原発事故を契機に弱体化した電事連。かつての立場が逆転し、電力業界が経産省の操り人形になる日も近いかもしれない。