拝啓、上場企業殿。自らの「コスト管理の欠陥」を棚に上げて、下請け企業へ「コストカット」を強要するなかれ

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 先日、友人の子息の結婚式に出席した際、披露宴でケーキカットを行なうセレモニー用のケーキが話題になった。食べることのできない作り物であることは、誰もが知っている。カットする部分にだけクリームが埋め込まれており、天井に届かんばかりの本体部分は他の披露宴でも使い回される。

 そのとき話題になったのが、あの本体部分の耐用年数は「何年なのだろう」ということであった。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参照すると、「興行または演劇用具/小道具・大道具」の法定耐用年数は「2年」とある。結婚式が興行か演劇か、はてさて「その他のもの」なのかは、意見の分かれるところであろう。

 式場の係員によれば「おおよそ2年でしょう」ということであった。ただし、年に1度か2度は、「花嫁の父」が泥酔してケーキに抱きつき、壊してしまうハプニングが発生するそうだ。耐用年数をまっとうする「小道具」ではないらしい。ちなみに、本物のケーキを使用したい場合は、「別途ご予算を承ります」ということであった。

 結婚式場というのは、不思議なビジネスである。月曜~金曜までは開店休業状態。週末が仏滅と重なれば、その日も開店休業。稼働率は当然、ゼロである。ただし、様々なイベントを呼び込めば、そこそこ「いいビジネスになる」らしい。

 この場合に重要なのは、マーケティングだ。特に冠婚葬祭ビジネスは、市町村の人口動態(出生率・死亡率・人口構成比)や、同業他社の動向をどれだけ把握できるかが重要な戦略になる。

 市区町村内の式場の数を把握すれば、冠婚葬祭ビジネスは万全だ、というのは安易な発想だ。最近は、式を挙げずに、内輪のパーティですませるケースが多いからだ。

 経営戦略を展開する上で、ライバルの見極めは重要だが、どこに潜んでいるかがわからないのが厄介だ。例えば、2012年に開業した東京スカイツリーのライバルが、東京タワーだけだとは限らない。娯楽性という点に着目するならば、第59回コラムで「利益増減分析表」を駆使した東京ディズニーリゾートや、12年7月に新装オープンした東京ジョイポリスのほうが、強力なライバルになる。

 百貨店やショッピング・モールも、娯楽性という点に着目するならば、東京スカイツリーのライバルになる。逆の見方をするならば、近年、百貨店業界の業績が芳しくないのは、ライバルの見極めを誤り、親子連れ(特に子ども)の需要を奪われた可能性だってあるのだ。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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