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インキュベーションの虚と実

コミュニティづくりはインキュベーションの原点
鯖江の首長、チャンピオン、エコシステムに学ぶ

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第9回】 2012年8月20日
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 スタートアップは起業家やチーム次第の面はあるが、インキュベーションの視点からはコミュニティづくりが重要だ。シリコンバレーもそうだが、地域のコミュニティがアントレプレナーシップを育む。

 日本でも“地域の元気化”は長きにわたり課題であり、これまでも全国各地でベンチャー振興策などが施されてきたが、総じて結果はお寒い。型に囚われた策が多く、やる前からダメだろうと思ってしまうようなものが多い。

 そんななかで、わずかであるが、起業家や筆者のようなスタートアップ支援者が注目すべき事例もある。たとえば、「超交流会」(京都大学情報学同窓会が京大以外の人々を巻き込む集い)などを行なっている京都は、大阪や神戸より元気だ。鯖江や八戸は、なぜか東京はじめ、外から元気な人々を引き寄せている。

 もちろん、これらの地域は振興策によって企業が育ち、産業集積地として成長しているかと言えば、それはまだまだこれからだ。しかし、将来への兆しを感じさせる例から、インキュベーションの原点とも言えるコミュニティづくりのヒントを得ることはできる。今回は“地域の元気化”について具体例を取り上げながら、インキュベーションの原点を考えてみたい。

人と魂なしでは何も起きない
地域振興のセオリー

 地域振興というと産業(地域)クラスターがよく言われる。シンガポールは国という単位でクラスター形成の施策をアグレッシブに進めている例だ。

 産業(地域)クラスターは、「特定分野における関連企業、専門性の高い供給業者、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学や業界団体、自治体など)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態」と経営学者マイケル・ポーターが定義している。ブドウの房(クラスター)のように一つの地域に企業や様々な組織が地理的に集積し、産業を創造するものだ。

 自然発生的にできたシリコンバレーは、こういったクラスターの代表例だが、テキサス州オースティンの情報産業クラスター、カリフォルニア州サンディエゴのバイオ産業クラスターは政策的な努力が相まって形成された例だ。

 このほか欧米には、米ボストン、米マンハッタン、米ナッシュビル、英ケンブリッジ、フィンランド・オウル、スイス・ニューシャテルなどの代表的な地域がある(参考「動け!日本」)。しかし、「動け!日本プロジェクト」の松島克守・東京大学教授/総合研究機構長は、プロジェクト後(2003年)に、「日本では全国42都市を調べたのですが、地域クラスターが形成されていると確認できる地域はほとんどない」と述べている。

 最近は日本でも政府が予算をつけ、経済産業省が旗を振っているが、まだまだ道のりは遠いというのが実情だ。

 筆者は、京都のバイオ・クラスターの研究について、2010年にデポール(DePaul)大学政治学部准教授キャサリン・イバタ=アレンズ博士のお話をうかがう機会があった。京都は特徴的なところで、政府をあてにせずにバイオ・クラスターをつくった。ベンチャーへのローンなどファイナンスも地場でプログラムを整備したという。

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本荘修二 [新事業コンサルタント]

多摩大学客員教授、早稲田大学学術博士(国際経営)。ボストン・コンサルティング・グループ、米CSC、CSK/セガ・グループ会長付、ジェネラルアトランティック日本代表を経て、現在は本荘事務所代表。500 Startups、NetService Ventures Groupほか日米企業のアドバイザーでもある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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