クリーニング業界が震撼している。違法ドライクリーニングの実態について、国土交通省が大々的な調査に乗り出したからだ。調査対象は全国3万2000。うち8割以上が違法操業といわれており、是正措置による廃業が続出しかねない。ところが、この違法操業、そもそもは行政が容認してきたというから話は複雑だ。

 昨年7月、全国600店舗をチェーン展開するクリーニング業界3位、ロイヤルネットワークが行政指導を受けた。「さいたま北工場」に対するもので、後に山形県や福島県の同社工場でも法律違反が判明している。

 続く12月、今度は業界2位のきょくとうが全国約20ヵ所の工場で違法操業を続けてきたことが新たに判明。これも行政指導の対象となった。

 クリーニング業界大手に対する立て続けの行政指導はいかにも異例である。何が「違法」だったのか。

 問題は、ドライクリーニングに使われる「溶剤」である。水を使うと衣類が縮んでしまうため、デリケートな素材には適さない。そこでドライクリーニングでは、溶剤と呼ばれる液体で油脂性の汚れを洗い落とす。

全国3万2000の8割が廃業?<br />クリーニング業界大騒動
これが石油系溶剤(右)と専用の洗濯機(上)。別の溶剤を使うためには1000万円近い投資を強いられるが、街のクリーニング店にその余裕はない

 溶剤には、石油系溶剤、塩素系溶剤、フッ素系溶剤の3種類があるが、クリーニング店・工場のおよそ8割が石油系を使用しているといわれている。

 なぜなら、塩素系とフッ素系は石油系の10倍近く価格が高い。それだけでなく塩素系はその毒性から土壌汚染の懸念があり、フッ素系はオゾン層破壊物質として使用を制限されている。

 ところが、石油系溶剤にも欠陥がある。灯油に近い成分だけに引火性が高いのである。そのため、石油系溶剤を使用するクリーニング店・工場は、都市計画法が定める工業系地域にしか造ることができないと建築基準法で定められている。

 行政指導を受けた大手2社は、工業系地域以外の場所で石油系溶剤を使っていた。すなわち、建築基準法違反である。両社は、石油系溶剤を使わないドライクリーニング機への交換、工場移転を余儀なくされた。

違法操業を容認した厚労省・国交省の罪

 もっとも、この法律違反、じつは行政当局が長く容認してきたものであり、行政指導を受けた業界大手も「異議あり」というから、話は一筋縄ではいかない。

 違法操業発覚後にきょくとうが公表した文書「クリーニング業の健全な発展と社会的地位の確立のために」には、以下のような記述がある。