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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか?
米国の失業率が回復しない本当の理由

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第59回】 2012年8月23日
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 では、こうした社会が健全なのだろうか?両教授は疑問を投げかけている。儲けている人が更に儲けたところで超過分は貯蓄に回ってしまい、消費に回らない。消費はGDPの70%を占めているので、こういう状態が長く続けばやがてGDPも頭打ちとなる。更に、貧しい家庭に生まれた子どもは、貧しいがゆえに良い学校へも進学できず、機会の平等が損なわれる。更にこれが深刻化すると「打倒!ウォールストリート」のようなデモがいま以上に頻発するかもしれない。

 コンピュータの発達は今後どのように進むのだろうか。現在試験中のプロジェクトにそのヒントがある。2010年10月にグーグルは自動運転車を発表した。これはトヨタのプリウスを改造したもので、車内に搭載したコンピュータが、車体に取り付けられた様々なセンサーから送られてくる情報を解析して車の自動運転を可能にした。既に22万キロをほとんど人力の介在なしに走り続けているという。

 2011年1月にLionbridge TechnologyはIBMと共同開発した翻訳ソフトGeoFluentを発表した。これは確率を使った機械翻訳ソフトで90%の確率で正確な翻訳ができるという。同じくIBMが開発したソフトで人気の四択クイズJeopardy!を回答するソフトがある。これは人間を凌いで勝ち続けているという。

 これらに共通するのは、過去に蓄積された膨大なデータの中から合致するパターンを見つけ出し、確率の高い順に回答していく能力である。コンピュータが更に進化すると、問題解決能力、感性といった人間固有の能力を代替していく可能性がある。最後に人間に残されるのはモラルと創造力だけになるかもしれない。

 チェスの世界では、1997年にコンピュータが人間に勝ってしまった。しかしいま、チェス関係者に世界で一番強いのはどのコンピュータかと聞くと、それは「コンピュータを上手に使った人間のチームである」と言う。コンピュータにはコンピュータが得意な仕事をさせ、人間は人間が得意な仕事をする。両方合わせて驚異的な力を発揮する。これは何を意味するのだろうか?

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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