
PHOTO: ADAM AMENGUAL FOR WSJ
【ロサンゼルス】もし予算だけを考えれば、映画「ウェイ・オブ・ザ・ウォリアー・キッド」は、米ジョージア州アトランタやカナダ、オーストラリア、英国で撮影されていただろう。米海軍特殊部隊(SEAL)の元隊員がいじめに遭うおいを訓練し、成長させる物語だ。この作品のプロデューサー、ベン・エバラード氏(41)が人気俳優クリス・プラット氏に脚本を見せたところ、彼は出演を快諾したものの条件を一つ出したという。「撮影はロサンゼルスでお願いしたい。妻が妊娠中なんだ」
エバラード氏は自身の第二の故郷であるロサンゼルスにとってこれは勝利でもあり、警告でもあると受け止めた。純粋な経済的観点に立つと、別の場所での撮影が好まれるようになっている。ロサンゼルスを選ぶとすれば、妊娠中の妻を持つスターのように特殊な事情を抱えている場合が多い。エバラード氏は自身がプロデュースした映画7本のうち5本をロサンゼルスで製作した。うち3本はスターの家庭の事情によるものだった。
もしロサンゼルス郡が一つの国だとすれば、その経済規模は世界上位20カ国に入る。だがその経済がいま不振に陥っている。同郡の就業者数は、新型コロナウイルス流行前の2019年末に比べて1%減少。一方、米国の就業者数は同期間に5%増加している。
その大きな理由は映画・動画製作ビジネスの低迷だ。米労働省のデータによると、ロサンゼルス郡の映画・音声録音に関する雇用は2019年以降、10%減少している。ロサンゼルス郡の撮影許可などを調整する非営利団体(NPO)FilmLAによると、長編映画・テレビ・CMなどあらゆる製作における「撮影日数」は2024年まで3年連続で減少した。FilmLAの調査では、世界の映像製作プロジェクトに占めるカリフォルニア州の割合は21年の23%から23年に18%まで低下した。