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「引きこもり」するオトナたち

「引っ込み思案の目立ちたがり屋」が
陥りやすい“社会不安障害”の苦しみ

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第12回】

 まもなく40歳になるヨシムラさん(仮名)は、中学時代、生徒会や放送委員を務めるほどの目立ちたがり屋で、将来、テレビ局のアナウンサーか政治家を目指していた。そんな性格から、当時は、生徒会の先輩に対しても、物おじせずに意見を言ってしまうところがあった。

 ある日、ヨシムラさんは、先輩から体育館の裏に呼び出されて、「おまえは、後輩のくせに生意気だ!」と“焼き”を入れられた。それを機に、彼はどもって声が出なくなったり、人前に出ると緊張して手に汗をかいたり、動悸がするようになった。

 しかし、学校の成績は良かったため、都内の一流私立大学を難なく卒業した。その後、司法試験を受け続けたものの、なかなか合格できずにいた。

 生活に支障をきたすようになったのは、30歳のときに学習塾の講師になってからのこと。とくに父兄を前にすると、どもって声が出なくなり、手に汗をかいた。自分のパフォーマンスを最大限に引き出すことができないため、職場では、マイナスのイメージを受け、年収などの社会的地位も下がったという。ヨシムラさんは、職場に出勤するのが苦痛になり、「うつ病ではないか」と言われた。

強気と弱気が混在!?
大学卒業まで見過ごされる症状

 「うつ病と診断されている裏側に、実はそもそもの要因である『社会不安障害』が隠されているケースも多いことが、最近わかってきたのです」

 こう指摘するのは、JR巣鴨駅近くで、「ひもろぎ心のクリニック」(東京都豊島区)を開業する渡部芳徳理事長(医学博士)。うつ病の患者に、自分自身を客観的に観察して理解してもらうために開発した『うつ病が快復するノート』(主婦の友社)の著者でもある。

 社会不安障害は、「パニック障害」、「全般性不安障害」、「強迫性障害」と並んで分類される「不安障害」の1種だ。

 「社会不安障害の共通する特徴は、引っ込み思案の目立ちたがり屋。強気と弱気が混在しています。元々の発症年齢は比較的若く、人前に出ると緊張する、赤面恐怖、視線恐怖といった症状があります。ただ、大学を卒業するまでの間は、人前で緊張することがあっても、問題なく卒業することができるため、見過ごされてきました。他人と接しなくても、試験さえできれば、卒業できてしまうからです。ところが、こうした人たちは会社に入ってから、職場で不適応を起こしてしまいやすいのです」(渡部理事長)

統合失調症と誤診されやすい
社会不安障害

 統合失調症と診断される中にも、実は社会不安障害と識別しきれていないようなケースが少なくないという。

 出版社に勤務していた30代女性のカオリさん(仮名)は、小学生の時、ミュージカルの主役を張るなど、いつも明るくて目立っていた。しかし、主役を張ってからは、同級生などから「生意気だ」などといじめられ、ボコボコに殴られたという。

 翌年の舞台では一転、裏方に回ったが、人前に出ると、とても緊張するようになり、まったく別人のように変わってしまった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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