近年の建設市況は絶好調が続いた。20年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピック関連の建設や再開発など旺盛な需要が業界を支えたからだ。大成の売上高も膨らんだ。村田社長が就任した16年3月期に1兆5459億円だったものが、20年3月期は1兆7513億円となり、約2000億円増加している。

 仕事量が豊富で、大手ゼネコンは案件を選別して営業する選別受注を行えるまでになっていた。しかしこの1~2年は、五輪後の大型案件などで大手や準大手ゼネコンが価格競争を繰り広げている。こうした受注合戦では赤字とはいかないものの利益率は厳しい傾向になり、案件の大型化が進むことで、一つ受注を逃せば見込んでいた売り上げが大きくへこんでしまう。

 国内が好調なうちに海外建設を拡大させることはゼネコン各社の成長戦略の一つだったが、大成は出遅れていた。同じく大手の大林組や鹿島は、長年、欧米やアジアで開発事業に積極的に取り組んできている。清水建設も昨年度に始まった中計で、海外事業や不動産事業の強化を大きく打ち出していた。

 大成も海外事業は進めてはきたが、かねてより積極的とはいえず、20年3月期決算の単体の海外売上高は210億円規模にとどまる。大林組と鹿島はそれぞれ4600億円以上(2社とも海外子会社、関係会社による)を稼いでおり、大きく差が開いている。

 海外事業以外においても、大成の中長期的な成長戦略は見えづらい。大手各社は建設事業に基盤を置きながら事業柱の多角化を進めている。大林組は再生可能エネルギ―分野に注力しており、鹿島は前出の海外開発、清水建設は不動産開発、竹中工務店はICT推進や街づくりなどの分野の強化などだ。

 対して大成は、バブル崩壊から引きずった建設不況や、リーマンショックの余波で傷んだ財務を率先して見直し、いち早く財務の優等生になったものの、事業面は各事業とも平均的な取り組みで特筆するものがない。

 そうした状況の中、村田社長は今年3月下旬に社長交代を決心し、4月上旬に建築総本部長兼建築本部長の相川善郎専務取締役(62歳)に後継を打診したという。