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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

中国は「中所得国の罠」に陥らず
一人当たりGDP=1万ドルを実現できるか

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第8回】 2012年8月27日
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転換期にある中国経済

 中国経済がいま大きな転換期にあることは、誰の目にも明らかだ。

 リーマンショックや欧州経済危機で、世界経済全体の景気が低迷しているなかで、輸出に依存してきた中国経済は大きな影響を受けている。輸出偏重から国内需要へのシフトを図ってきたが、その転換は必ずしもうまくいっていないようだ。

 中国の一人当たりGDPはすでに5000ドルを超えるような水準になっている。低廉な労働コストを利用して輸出競争力を確保するというには、もはや中国の賃金は高すぎる。すでにタイなどと比べても賃金コストは高くなってしまった。日本企業のなかにも、中国での人件費の高騰を懸念しているところが多い。中国経済が輸出だけで伸びていく時代は終わったのだ。

 人口面でも中国は大きな転換期にある。一人っ子政策を30年以上も続けた影響から、今後急速に少子高齢化が進むことが予想されている。中国の生産労働人口が減少し始めるのは時間の問題である。潤沢な労働を利用した産業発展が難しくなってきている。中国が持続的な成長を続けていくためには、産業構造や経済構造の大きな転換が求められる。

「中所得国の罠」とは何か

 2011年9月、私は世界銀行の招待で中国での会議に出席した。世界銀行と中国政府が共同で作成した2030年の中国経済ビジョンのレポートに関する議論に参加するためである。そのレポートのキーワードは「中所得国の罠」というものであった。

 この「罠(trap)」というのは、「貧困の罠(poverty trap)」というかたちで使われることが多い。貧しい国が貧困の悪循環のなかでなかなか成長できない状況を指している。経済発展論の分野における中心的な考え方である。貧困の罠からどう抜け出すか、という点が経済発展論の中心的な課題でもある。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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