マハティール氏首相辞任で
政治の混乱が表面化
マレーシアでは、一昨年の総選挙において1957年の独立以降初めてとなる政権交代が起き、マハティール氏が15年ぶりに首相の座への返り咲きを果たした。
総選挙において政権交代が実現した背景には、ナジブ元政権下でナジブ氏の肝いりで設立された政府系ファンド(1MDB)を巡る汚職問題やナジブ氏の妻による政治介入など、政治の「私物化」に対する反発があった。
また、選挙戦においては、マハティール氏がアンワル元副首相への首相禅譲を公約に掲げ、野党間の共闘が図られたことも、政権交代を大きく後押ししたと考えられる。
ただし、政権交代から間もなく2年がたとうとしているにもかかわらず、マハティール氏はアンワル氏への禅譲の時期を明言しないなど、首相禅譲への見通しが立たない状況が続いてきた。
これには、マハティール氏とアンワル氏の間の複雑な関係も影響している。
アンワル氏はマハティール元政権下で副首相を務めるなど、マハティール氏の腹心であった。しかし、経済政策を巡る対立で袂(たもと)を分かって野党指導者となり、加えて、同性愛行為を巡る疑惑で有罪判決を受けた経緯がある。
一方、マハティール氏も首相引退後に当時のナジブ首相との関係悪化などを理由に離党して野党指導者となったため、両氏にとってはナジブ氏という「共通敵」の存在がかつての恩讐(おんしゅう)を越えて共闘する一因になったといえる。
ただし、ここに来て与党連立内における「ポスト・マハティール」を巡る思惑が交錯する事態となったことで、マハティール氏は先月国王に辞表を提出する事態に発展するなど、政治的な混乱が表面化した。