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ファシリテーションの道具箱 森時彦

「プロコン」で賛成・反対の理由を全員で共有する

森 時彦 [チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役/リバーサイド・パートナーズ代表取締役]
【第8回】 2008年1月30日
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 ある案を採用するか不採用にするか、そういうシンプルな合意形成でも、議論百出してなかなか結論が出せないことは少なくない。そんなときに、この「プロコン」で意見を引き出してみるといい。

 「プロコン」とは、そのディベートで使われる「賛成(プロ)」「反対(コン)」の意味だが、ディベートとは異なり、ファシリテーションでは全員で「賛成意見」「反対意見」をロールプレーする要領で順番に考えていく。それによって、全員に異なる視点を明確に意識させ建設的な議論を促す。賛成・反対の理由を全員で共有することで、決定事項への納得感と当事者意識を高めることができる。

[事例] ある医薬品メーカーの
営業部デスク共有化問題

 コスト低減は、すべての会社の共通課題である。この医薬品メーカの営業部でも、コスト削減の施策をいろいろと講じてきたが、ついに占有デスクを廃止して数を減らし、それによってオフィススペース削減することが本社から提案された。

 営業マンからは反対の声が高く、モラルを気にした北里営業部長は、全担当者を集めて話し合うことにした。集まった部員を前に、はじめに会社側の事情を説明し理解を求めようとしたが、部員からは口々に反対意見が出てきた。「社内に自分の居場所がなくなる」「夕方には、日報書くために全営業が帰社する。そのときに使えるデスクがないと困る」「ものを置くスペースがなくなる」。

 さらに「会社への帰属意識がなくなる」という声があがったところで、北里は立ち上がり、反対意見をホワイトボードに書き出していった。「もっと他に意見はありませんか?」

 意見が途切れたところで、北村は全員を見渡しながらさらに反対意見を募った。30分ぐらいかけて、しっかりと反対意見を聴き出した北里は、部屋の反対側にあったもう1枚のホワイトボードに向かうと、「皆さんの反対意見はよくわかりました。しかし、この案にもよいところがあるはずです。この案のいいところを考えてみてもらえませんか? 反対の方もちょっとロールプレーをしてみてください」と言うと、ホワイトボードに体だけを向けた。

 「まあ、コストは下がるんでしょうね」と誰かがおもしろくなさそうに応えた。「他にはありませんか?」ホワイトボードに書き留めながら北村は次の意見を促した。しばらくの沈黙の後「もしですよ……」と前置きをして、入社3年目の村岡が先輩たちの顔色をうかがいながら口を開いた。

 「日報をやめてメールでOKにしてもらって、直行直帰を認めてもらえるのだったらいいかもしれません」。「それができるとして、この案のメリットは何ですか?」と北里が聞き返した。

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森 時彦 [チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役/リバーサイド・パートナーズ代表取締役]

1952年大阪生まれ。大阪大学、マサチューセッツ工科大学卒。工学博士、経営学修士。日本GE役員、テラダイン日本法人代表取締役等を経て、チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役。2007年、中小企業の成長促進・事業承継に重点を置いた投資会社リバーサイド・パートナーズの代表取締役に就任。著書に『ザ・ファシリテーター』『ザ・ファシリテーター2』『ファシリテーター養成講座』(いずれもダイヤモンド社刊)などがある。


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