(4)人柄を調べ、良さそう(悪そう)な方を選ぶ

 2人の権威の人柄を調べ、良さそう(悪そう)な方を選ぶという方法である。本来人柄は提案の良しあしと関係ないのだが、内容が難しすぎる場合、まったく関係のない人柄の良さが決め手になることもある。情報の受け手(あなた)が、より好感をいだくことが主因である。

 だが、これまた逆張りをする人がいる。革新的な経営で知られるある経営者は、あまり人から好かれない人の意見のほうを優先する。本当に本質的で洞察力のある人は普通の人からは理解されずに孤立しているはずだ、というのである。歴史上の偉人を見ても、確かに変人と呼ばれた人は多い。とはいえ、立派な人格者であったケースも普通にあるので、この方法に価値があるのかどうかはよくわからない。

(5)自分の頭で内容を必死に考え、良いと思うほうを選ぶ

 知力に自信のある人は、どんな場合でもこの方法を選ぼうとする。そして、必死に取り組む。頭が下がる。

 とはいえ、どんなに賢い人でも、不確実性に満ちた未来に向けて、どのような選択をすべきかということについて、絶対的に正しい答えを持ってはいないし、個人の能力にもおのずから限界はある。必死に考えたからといって、成果がよくなるとは限らない(ただ、当人の能力向上にはつながる)。

(6)失敗しても批判を受けることが少ないほうを選ぶ
(7)成功したら大きな称賛を浴びそうなほうを選ぶ

 どちらが正しいかはわからないので、とにかく結果から逆算して、自分にとって望む結果が生まれるかどうかで選ぶという方法である。帰結主義であり、かつ、この選択をした場合の本来の受益者ではなく(つまり社員やその会社のステークホルダーのためではなく)、自分の利害を中心に意思決定を行っている。

 あなたが役員一歩手前であったと想像してみてほしい。大きなミスさえしなければ役員になれるという場合なら、(6)が、ここで一発大ホームランをかっ飛ばさない限り、出向させられるというのならば(7)が選択されるだろう。案そのものの良しあしの問題がいつの間にか、あなたの個人的な出世の問題に置き換わってしまうのだ。残念なことに重大な意思決定がこのような形で異なる次元の意思決定基準にダウングレードしてすり替わることはよくある。

(8)勘の良い秘書に直感的に選んでもらい決める

 会社の偉い人たちは結構この方法を使う。普段一緒に働いている秘書の中には、不思議といろんなことに勘の働く人が1人や2人いる(そういう人を配置しているのだと思う)。そういう人(主に勘の良い女性)に、前情報を与えずに、「○○さん、これ、どっちのほうが良いと思う?」と話を振ってみる。○○さんは直感的に「こちらが良いと思います。なんか△△みたいですから」などと返してくる。「おお。そうかい。じゃあ、そうしようかな」ということになる。

 もちろん、その人が良いと言ったほうを必ず選ぶということではないが、秘書の発言からなんとなくぼやけていた視界がクリアになり、どちらかに決める勇気が湧いたりすることがある。このような勘の持ち主は、経営者たちにとっては、秘書でもあり、巫女(みこ)みたいな存在でもある。