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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

買収防衛策が裏目に出たアデランス経営陣の誤算

――スティールの戦術変更と株主総会に異変の流れ

永沢 徹 [弁護士]
【第32回】 2008年6月6日
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 先月29日に開催されたアデランスの株主総会。そこで異例の事態が起きたことは、テレビのニュースや新聞記事でも大きく取り上げられたのでご存知の方も多いかと思う。そこで起きたのは、社外取締役2名を除く、9名の取締役(社長含む)再任の否決。まさに株主によって、現経営陣に「NO」が突きつけられた瞬間だった。

 これは、同社の筆頭株主であるスティール・パートナーズの意思表示に、他の株主が同調した結果である。スティールは今回、株主総会には出席せず、議決権の事前行使で反対票を投じたことを明らかにしている。このスティールの反対票も含め、事前行使の段階で反対票が多数にのぼっていたようで、総会開催前に勝敗はついていたといわれている。

一転して株主を味方につけた
スティールの戦術変更

 それにしても今回気になるのは、これまでと異なるスティール側の動きである。今回の株主総会に際してスティール側は、株主提案や増配の要求も行なっていない。自分たちが選んだ役員の選任を求めたりもしていない。淡々と経営陣の再任についてだけ反対票を投じたのである。これは、委任状争奪戦を繰り広げたブルドックソース事件以降、スティールのスタンスが変わってきた証拠であるように思える。

 少なくとも昨年の株主総会では、スティール側の主張に賛同する株主はほとんどいなかった。それが今年は一転して、かなりの賛同を集めたことになる。今回の総会には86%の株主が決議に参加したとされており、とすると取締役再任の否決に必要なのはその過半数である43%。仮にスティールの議決権割合を29%と見ると、14%以上の株主がこれに加わったということになる。

 しかも、有名な独立系議決権行使アドバイス会社であるISSやグラン・ルイスの両社ともアデランス側の提案に賛同する意見を出していたにもかかわらず、多くの株主は反対票を投じたということも、これまでと大きく違う点であり、とても興味深い。

自ら導入した
買収防衛策がアダに・・・

 今回の総会では前述した通り、社外取締役2名だけが選任されている。この社外取締役2名の選任というのは、昨年の総会で導入された買収防衛策に際して会社側が提案したものであるが、今回その買収防衛策がアダとなってしまった形になる。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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