ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
農業開国論 山下一仁

主要穀物の完全自給まで公約!
鳩山民主党“農政改革”の幻想と矛盾

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]
【第17回】 2009年9月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 民主党の鳩山政権が9月16日発足し、農相には選対委員長の赤松広隆氏が就任した。赤松氏は、旧社会党グループのリーダー格で、ウルグアイラウンド交渉の最中の1993年には、党の方針に反して「コメ関税化」を肯定する発言をした人物である。果たして今回、農相として民主党がマニフェストで示した当初の方針のまま動くのか、それとも軌道修正を図っていくのか、興味をそそられる人事である。

 そもそも、筆者は、民主党がマニフェストに盛り込んだ農業に関する公約は、すべては実現できないと考えている。端的に言えば、農家にも消費者にも好い顔をしてしまった結果、整合性を失い、目標のどちらかを立たせると、どちらかが立たないという隘路にはまり込んでいる。よく言われているとおり、民主党の中に、行政経験の豊富な人たちが少ないということの証左であろう。

 では、抽象論はさておき、マニフェストをベースに、具体論で問題点を検証したい。

 周知のとおり、民主党が掲げる農業関連の公約の中で最も注目されているものは、農家への戸別所得補償政策だ。馴染みのない人に改めて説明すれば、これは農家に対する財政からの直接支払のことであり、具体的には、農家ごとに「生産目標数量」を定め、この目標を達成した農家に生産費と市場価格の差に相当する支払いを行うというものである。

 誤解を恐れずに言えば、この所得補償そのものは害悪ではない。欧州連合(EU)も公然と行っていることであるし、「価格から直接支払いへ」というのは世界の農政の流れだ。問題は、民主党が戸別所得補償の支払い条件や方法を間違えていることである。

 民主党の考え方では、コメの場合、「生産目標数量」とは、10トン作れる農家が自給率向上のために、15トン作ったら補償するというものではなく、10トン作れる農家が減反をして6トン作ると補償をするというものだ。つまり、生産調整に参加するか否かの判断を各農家に任せる減反選択制への移行であるとはいえ(現在の完全減反制も現実には有名無実化しているが)、補償というニンジンをぶら下げて、減反にとどめようとしている。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
絶賛発売中!
『企業の知恵で農業革新に挑む!』

儲からない日本の農業をビジネスに変える!
元農林キャリア官僚が、農ビジネスを取材し、処方箋を提言!
訂正:本書40ページ2行目~5行目 「たとえばトラクター。日本のトラクターは欧米のものよりも性能がいい。その結果、平均値で言うと、米国では一七〇ヘクタールの農地を一・七馬力のトラクターで耕しているのに比べて、日本ではその100分の一、一・七ヘクタールから、せいぜい二ヘクタールの農地を五馬力のトラクターで耕している。」を削除いたします。

話題の記事

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]

東京大学法学部卒業。同博士(農学)。1977年農水省入省。同省ガット室長、農村振興局次長などを経て、2008年4月より経済産業研究所上席研究員。2010年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。主著に『日本の農業を破壊したのは誰か―農業立国に舵を切れ』(講談社)、『企業の知恵で農業革新に挑む!―農協・減反・農地法を解体して新ビジネス創造』(ダイヤモンド社)、 『農協の大罪』(宝島社新書)、『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社)、『環境と貿易』(日本評論社)など。


農業開国論 山下一仁

自給率39%という危機的状況にある日本の「農」と「食」。農水省元幹部で、WTO交渉の最前線にもあった気鋭の論者が、農業政策のあり方について大胆提言する。

「農業開国論 山下一仁」

⇒バックナンバー一覧