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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

「スルガ地上げ事件」は、弁護士大量失業時代への警鐘か?

永沢 徹 [弁護士]
【第20回】 2008年3月7日
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 つい先日、大阪市の建設・不動産会社「光誉(こうよ)実業」の社長らが、弁護士資格がないにもかかわらず、オフィスビルの立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反容疑で逮捕されたというニュースが流れた。問題となったオフィスビルは、東京都千代田区にあった「秀和紀尾井町TBR」ビル。このビルの所有者は、東証二部上場企業の「スルガコーポレーション」。そのスルガコーポレーションが、光誉実業に対して立ち退き交渉を依頼、多額の報酬を支払ったと見られている。

 さらに光誉実業は、指定暴力団山口組と深いつながりがあるといわれており、実際の立ち退き交渉においても、お経を大音量で唱えるなどかなり荒っぽい手法をとっていたとされる。このビルのほかにも、渋谷区をはじめとするいくつかの物件でも、同じようなケースで取引を行なっていたともいわれており、上場企業の取引が暴力団の資金源として利用されていた可能性が高い。

 弁護士法72条により、弁護士資格を持たない者が、報酬を得る目的で、紛争性の高い案件の法律事務を業として行なうことは禁止されている。これは「非弁行為」といわれており、今回の事件はこれに違反したとして逮捕されたのである。

上場企業にあるまじき
反社会的勢力との不適切な関係?

 われわれ弁護士が、M&Aなどの案件を取り扱う場合、買収対象となる企業について「暴力団その他の反社会的勢力と関係がないか」ということを必ずチェックしなければならないことになっている。また、上場申請するときも同様で、主要な取引先に反社会的勢力と一切関わりがないことの誓約書を幹事証券会社や取引所に提出させられている。したがって、今回の事件のように上場会社が、反社会的勢力と思われるようなものを使って、立ち退き交渉をするということは本当に考えられない話である。

 しかも、スルガコーポレーションは、形式上、一旦は光誉実業にビルを売却した形にし、所有者としての立場を仮装させていたという。光誉実業は、ビルの所有者であるスルガコーポレーションの代理人としてではなく、自らビルの所有者と装ってテナントに対応し、家賃も受け取りながら立ち退き交渉を行なっていたという。つまり、スルガコーポレーションは、弁護士法上、光誉実業が代理人として交渉できないことを十分に知ったうえで、形式的にビルの名義移転を行なったのではないかと考えられる。そういう意味では、今回逮捕された光誉実業よりも、依頼した側であるスルガコーポレーションのほうの責任が大きいと思われる。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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