ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
田中均の「世界を見る眼」

国際社会も危惧する日本の右傾化と政治主導外交
深刻な日中関係を安定軌道に戻すための「4原則」

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第12回】 2012年9月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

ディッチレーの国際会議で懸念されて
いた日本の右傾化、政治主導外交

 一昨日まで、英国オックスフォード近郊のディッチレーで東アジアの政治安保を論じる国際会議に参加した。第二次世界大戦中の一時期、チャーチル首相が別荘として使用し、英米の指導者が戦後の体制を話し合った場所である。

 400ヘクタールという広大な敷地に建てられた荘厳な屋敷は、戦後米国やカナダなどの寄付を受け、ディッチレー財団が運営をする知的対話の場所となった。私もロンドンの大使館勤務の時代に何回か訪れた場所であるが、2日にわたって古い本に囲まれた会議室での議論を続けると、まるで世界を動かせる気分になるから不思議である。

 今回集まった約40名の有識者の中には、米国のクリストファー・ヒル、カート・キャンベルといった米国務省の東アジア担当次官補の現職、前職や、英国外務省のピーター・ウィルソン現アジア局長も参加していた。

 私自身も、時期は異なるが外務省のアジア局長を務めた経験があり、東アジアという課題を巡って密度の濃い議論ができた。

 会議の圧倒的関心は米中関係にあったが、会議参加者の多くは日本の状況に大きな懸念を示していた。その懸念の最大のものは日本社会の右傾化であるという。

 日本の防衛力強化、集団的自衛権の見直し、武器禁輸三原則の見直しといったことには米国などの諸国は期待し、強い支持をするが、村山談話や慰安婦についての河野官房長官談話を否定するような歴史や戦後秩序に触る動きは、米国を含め支持する国はいない。

 自民党の総裁選においても、このような動きが目立ち出すと、日本は東アジアで孤立していくのではないかと心配する声は強い。さらに、会議の外で話すと、日本という国は「政治主導」の旗印の中で外交ができない国となってしまったのではないか、という声も聞こえた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

「田中均の「世界を見る眼」」

⇒バックナンバー一覧