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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「企業の海外展開が増えると
日本が空洞化する」という勘違い

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第12回】 2012年9月24日
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中国製のトヨタの自動車は
どこで作られているのか?

 もう何年も前のことだ。操業を開始してから1年ほどたったトヨタの中国の工場に行く機会があった。広東省の広州にできた最新鋭の工場だ。

 現地で聞いたトヨタの方の話が強く印象に残っている。「この工場で生産される自動車の部品の大半はここから半径**キロメートル以内で生産されています」というのだ。**キロの部分の具体的な数字は忘れたが、30キロから50キロ程度だったはずだ。トヨタのこの担当者は、中国の地図を示して、どこからどのような部品が来るのか丁寧に説明してくれた。

 トヨタの広州工場の特徴の一つは、工場の敷地に隣接して主力部品メーカーの工場があることだ。隣の工場で作られた部品をすぐに使えるというメリットがある。この隣接地には日本から多くの部品メーカーが進出している。こうした隣接の日系企業からの調達も、そして中国地場企業からの調達も、すべて含めて部品調達の大半は地元でしている。これがトヨタの方の話だった。

 この話を額面通りに受け止めれば、トヨタや日産のような自動車メーカーが工場を海外に移転させていけば、日本国内では部品生産も含めて深刻な空洞化が起きると考えたくなる。しかし、話はどうもそうでもないようだ。

 私の同僚の経営学者、新宅純二郎教授が興味深い研究をしている。新宅氏は、中国の工場で生産される価値のどれくらいの割合が、日本からの輸出によるものかを自動車やオートバイのケースで計算しようとした。想像以上に日本の割合が多いという。

 トヨタの方がおっしゃるように、広州のトヨタの工場で生産される自動車の部品の大半が中国国内で生産されているとして、では工場内で稼働しているロボットや製造機械はどこで生産されているのだろうか。おそらく日本で生産されたものが結構あるはずだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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