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「ジョブズのおもちゃ箱」が空になれば普通の企業に
iPhone5で見えたアップル社“脱カリスマ路線”の微妙

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第244回】 2012年9月25日
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世界が目を凝らした“iPhone5”発売
熱狂の中に見える「失望派」の論理

 9月12日、注目のiPhone5が発表された。14日の予約開始日当日だけで200万を超える購入予約が入ったという。まさに世界中が目を凝らす最新のIT機器の登場だ。

 iPhone5に関しては、人々の間で賛否両論がある。失望派が指摘する1つの理由は、従来秘密主義を貫いてきたアップル社から、iPhone5についてはかなり前から製品に関する情報が漏れていたことがある。

 むしろ、アップルが意図的に情報を漏らし、注目を集める戦略を取ったのではないかとの観測も出るほどだ。それは、今まで人々をワクワクさせてきた楽しみの一部を奪ってしまったかもしれない。

 スティーブ・ジョブズ時代のアップルが発表する新製品は、完璧なまでの守秘性が保たれていた。だからこそ、実際の発表には常にサプライズがあった。しかし、今回のiPhone5にはそうした驚きがない。また、iPhone5は、基本的に今まで存在する製品のアップグレード版であるため、製品の斬新さを期待する人にはやや不満が残るかもしれない。

 しかし最大の問題は、アップルが今でもジョブズという大きな存在と闘い続けなければならないことだ。ジョブズは間違いなく、アップルをここまで導いたカリスマ経営者である。

 現在のアップルが、ジョブズの敷いたレールの上を歩くことは、同社の収益性を高める源泉となる。おそらく、彼が世に出した製品群の改良を重ねて行けば、当分相応の利益を維持することができるだろう。

 ただし、そのレールばかりに囚われると、皆が驚くような新製品を生み出すことはできない。ということは、どこかの段階で、人々はアップルの製品に飽きてしまうかもしれない。

 そのため現在のアップルは、故ジョブズに寄り添いながら、一方でジョブズから離れて行かなければならい宿命を持っている。

 2つの相反する命題を満足させることは、口で言うほど容易なことではない。下手をすると、アップルが大企業病にかかり、かつての輝きを失うことも考えられる。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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